天満宮菜種御供(読み)てんまんぐうなたねのごくう

改訂新版 世界大百科事典 「天満宮菜種御供」の意味・わかりやすい解説

天満宮菜種御供 (てんまんぐうなたねのごくう)

歌舞伎狂言。時代物。9幕。通称《時平の七笑》。外題脇に記す,菅原道真の〈八百七十五年忌〉に当たる1777年(安永6)4月,大坂小川吉太郎座(角の芝居)初演並木五瓶,中邑阿契,辰岡万作ほかの作。配役は菅丞相・武部源蔵を初世尾上菊五郎,伯母覚寿・左大臣時平を初世嵐雛助,土師ノ兵衛・白太夫・法性坊・紀ノ長谷雄を初世三枡大五郎,宿禰太郎・舎人造酒王丸を小川吉太郎,松月尼・腰元十六夜・源蔵女房戸浪を初世沢村国太郎,斎世親王を沢村千鳥,判官代輝国を藤川柳蔵,蘭の中将・春藤玄蕃を三枡松五郎,三善清貫・白太夫伜荒藤太を2世三枡他人,左中弁希世を坂東岩五郎,白太夫娘小磯・紅梅姫を山科甚吉,宿禰女房小桜・長谷雄女房渚を初世三枡徳治郎,菅秀才を尾上丑之助など。登場人物名が先行作(近松の《天神記》と竹田出雲ほかの《菅原伝授手習鑑》)と共通することでもわかるように,この2作をもとに歌舞伎化したもの。次に場割を記し,( )内に共通する先行作の場を記す。(1)序幕 加茂社(《菅原》初段),内裏(《天神記》初段),同廊下,同門外。(2)二幕 道真館(《天神記》初段),内裏,同記録所(《天神記》二段)。(3)三幕 都広小路(《菅原》初段)。(4)四幕 長柄堤。(5)五幕 源蔵住家(《菅原》四段)。(6)六幕 宿禰太郎館(《菅原》二段)。(7)七幕 播州曾根浜辺(《天神記》二段),同海上。(8)八幕 筑紫白太夫隠居所(《天神記》三段)。(9)九幕 法性坊庵室(《天神記》四段),内裏(同五段),天満宮同上)。《菅原》の三つ子兄弟に代わり,松月尼,紅梅姫,小桜の三つ子姉妹を登場させ,五幕では《寺子屋》の松王の役を長谷雄に当て,六幕の〈鶏娘〉の趣向などの工夫もあり,歌舞伎らしい優れた場面がある。とくに二幕目の時平が〈道真はいかいあほうじゃなァ〉と笑って幕をおろすところは〈笑幕〉とも称し,当時の国学者を感心させたという。この部分が通称の《時平の七笑》のいわれとなり,現在も活歴風な演出で上演されている。外題は五幕目で源蔵が菜種の詩〈花の色は蒸したる粟の如し〉を引いて,丞相秘蔵の松に菜種を供えるところによる。〈天神記物〉の歌舞伎の名作。
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歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典 「天満宮菜種御供」の解説

天満宮菜種御供
てんまんぐう なたねのごくう

歌舞伎・浄瑠璃の外題。
作者
並木吾八 ほか
補作者
長谷村新七 ほか
初演
安永6.4(大坂・小川座)

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世界大百科事典(旧版)内の天満宮菜種御供の言及

【天神記物】より

…以来,浄瑠璃,歌舞伎でしばしば上演され,上演頻度数でも3位以内にランクされている。この後の作品としては,浄瑠璃で《振袖天神記》(1769年正月),歌舞伎で《天満宮菜種御供(なたねのごくう)》(通称《時平の七笑(しへいのななわらい)》,1777年4月大坂)が出たくらいである。《時平の七笑》はもともと歌舞伎に書き下ろされたものであり,《菅原伝授手習鑑》の書替えとはいえ,原作に比肩する傑作。…

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