家庭医学館 「子どもの便秘と対策」の解説
こどものべんぴとたいさく【子どもの便秘と対策】
排便の習慣はさまざまです。毎日何度も排便する子どももいれば、2~3日に1度の子どももいます。たとえ3日に1度であっても、とくに苦痛がない場合は便秘とは呼びません。
一般に間隔が3日以上で、便がかたく、排便時に痛んで出血するなどの苦痛をともなうのが便秘です。
便秘は、つぎのように2つに大別できます。
●原因となる疾患がある症候性便秘(しょうこうせいべんぴ)
便秘をおこす消化管の病気には、ヒルシュスプルング病(先天性巨大結腸症(せんてんせいきょだいけっちょうしょう))、肛門狭窄(こうもんきょうさく)、肛門裂傷(こうもんれっしょう)などがありますが、もっとも多いのは肛門裂傷です。便秘で太くかたくなった便が肛門を通過するときにできる粘膜(ねんまく)の裂傷と痛みのため、排便をますます嫌がることが悪循環を形成し、便秘がひどくなっていきます。便秘と裂傷のどちらが先かは「鶏と卵」の関係です。
消化管以外の病気、たとえば甲状腺機能(こうじょうせんきのう)が低下するクレチン病のような内分泌疾患(ないぶんぴつしっかん)や、脳性まひ、筋ジストロフィー、脊髄損傷(せきずいそんしょう)などの神経筋疾患、さらに薬物の影響で便秘になることもあります。
精神的要因による心因性便秘(しんいんせいべんぴ)もあります。トイレで排便できる年齢なのに下着に排便してしまう遺糞症(いふんしょう)という症状がみられます。
●特別な疾患がなくておこる常習性便秘(じょうしゅうせいべんぴ)
乳児の場合 母乳栄養児では母乳不足が原因のことがあります。母乳不足の場合、赤ちゃんはなかなかお乳を口から離さず、授乳後すぐ空腹で泣きだします。また、栄養不足がちになるため、体重がなかなか増えません。このような赤ちゃんに授乳後、人工ミルクを与えてみるとよく飲みます。十分な量のミルクを飲めるようになると便秘は解消します。
ミルクや離乳食を十分摂取している赤ちゃんに常習性便秘がおこると、前回の排便から時間が経つにつれ食欲が低下し、ときどきいきんで痛そうに泣きます。便はしばしばウサギの糞のようにかたく、ころころしています。
原因ははっきりしないことが多いのですが、何らかのきっかけで便がかたくなり、排便時の痛みなど苦痛を避けようとして排便を嫌がる結果、便秘になると思われます。便に血液が付着するときには、肛門裂傷を疑います。
多くの場合、成長にしたがって食事内容が変化するため便秘は解消されていきますが、苦痛のない排便習慣をつくってあげる必要があります。「こより」などで定期的に肛門を刺激すると排便がうながされます。
便がなかなか出ないときは、まず浣腸(かんちょう)でかたい便を出し、作用の緩やかな下剤を使って排便をコントロールします。そのうち薬が不要になります。浣腸を連用すると、浣腸しないと便が出なくなります。注意しましょう。
年長児の場合 よい排便習慣ができていないために便秘になる子どもが少なくありません。朝食後、ゆっくり排便する時間がとれぬまま登校すると、排便をがまんする習慣から常習性便秘になりやすくなります。食後20~30分は腸の動きが盛んです。このときに、ゆっくり排便できる時間をつくってあげることが、便秘を防ぐたいせつなポイントです。
また、遊びに夢中になったり、トイレがこわい、汚い、授業中に行くのは恥ずかしいなどのささいな原因から排便を遅らせ、がまんする癖がついて常習性便秘になることもよくあります。排便を遅らせる原因は何かを探し、便意を感じたときにトイレに行ける環境をつくってあげることがたいせつです。