脊髄損傷(読み)せきずいそんしょう(英語表記)spinal cord injury

  • (運動器系の病気
  • )
  • せきずいそんしょう〔ソンシヤウ〕
  • 外傷を含む
  • 脊髄損傷 spinal cord injury

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

脊髄が損傷すると,仙髄損傷ではくるぶしから下,腰髄損傷では下肢以下,胸髄損傷では躯幹以下,頸髄損傷では上肢以下が麻痺し,感覚および運動障害が起る。第4頸髄節以上の損傷では横隔膜の運動障害も起るため,呼吸が停止して死亡する。脊髄はいったん損傷すると機能が回復しない。胸腰髄部損傷による両下肢麻痺では,一定程度の社会復帰は可能であるが,膀胱障害や褥瘡形成などの問題がある。頸髄損傷では四肢麻痺があり,介助なしには生活不能となる。

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朝日新聞掲載「キーワード」の解説

脊髄はから背骨の中を通って伸びる中枢神経で、手足などの末端へ脳からの指令を送ったり、末端の信号を脳へ伝えたりしている。厚生労働省推計(2006年)では、脊髄損傷者数は全国で約6万人。交通事故転倒、スポーツ時の事故などが要因といわれる。

(2015-04-10 朝日新聞 夕刊 1社会)

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デジタル大辞泉の解説

脊柱に強い力が加わり、脊髄が損傷することによって、損傷部以下の神経が麻痺し、運動・知覚自律機能に障害が生じる病態。損傷部位頭部に近いほど障害が重くなる。交通事故、高所からの転落、落下物の下敷き、スポーツ外傷などが原因となる場合が多い。中枢神経系は再生しにくいため治療は困難であるが、幹細胞を用いて中枢神経の機能を再生する治療法の研究が進められている。

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世界大百科事典 第2版の解説

なんらかの原因で脊椎圧力がかかり,脊椎が損傷を受け,この結果,二次的に脊髄が損傷を受けることによって,運動知覚障害が起こったもの。脊椎が受ける損傷の部位によって,症状は異なる。全脊椎のうち最も損傷を受けやすいのは,第5~7頸椎,第4~7胸椎,第10胸椎~第2腰椎の3ヵ所である。頸髄の損傷では四肢麻痺をきたし,体幹機能障害,呼吸機能障害も起こる。胸髄レベル以下の損傷では両下肢の麻痺(対麻痺)を生ずる。

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大辞林 第三版の解説

椎骨ついこつの骨折・脱臼や外傷により脊髄が損傷を受けること。下肢の麻痺や呼吸麻痺・排尿障害などを伴う。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

脊髄の損傷で、脊椎(せきつい)の骨折、脱臼(だっきゅう)、脱臼骨折の場合におこることが多い。これらの脊椎外傷の40%に脊髄損傷を伴うとされている。とくに頸椎(けいつい)の外傷では頸髄損傷を伴いやすい。
 脊髄が損傷されると、損傷高位の支配領域に運動麻痺(まひ)と知覚麻痺が生ずる。脊髄の損傷程度により麻痺の程度が異なり、完全麻痺と不完全麻痺とがある。脊髄は一度損傷を受けると元の正常な状態に戻らないので、麻痺が完全に治ることはない。第四頸髄以上の頸髄損傷では呼吸麻痺をきたすので、受傷後短時間で死亡することがある。また頸髄損傷では、下肢の麻痺だけでなく上肢の麻痺もきたす。脊髄損傷では膀胱(ぼうこう)・直腸麻痺もきたすので、排尿や排便の障害も現れる。膀胱炎を発生しやすく、慢性化し、また尿路感染が腎盂(じんう)腎炎まで進展して重篤な症状をきたすことがある。膀胱結石などの尿路結石が発生することもある。麻痺領域の皮膚、とくに骨格の浅い部位、たとえば仙骨部、踵(しょう)部(かかと)などには褥瘡(じょくそう)(床ずれ)が発生しやすく、かつ難治性である。
 急性期には局所の安静を守ることが第一であり、当初から褥瘡、膀胱感染、関節の拘縮に対する注意が必要である。急性期を過ぎたら積極的にリハビリテーションを開始し、自力での体位変換訓練、車椅子(いす)訓練、さらには起立訓練、歩行訓練と可能な限り機能を向上させる。また同時に、社会復帰のために職能訓練も行われる。したがって脊髄損傷患者の治療には、医師のみならず、看護師、理学療法士、作業療法士、職業訓練士はもちろん、社会福祉関係の人々の緊密な協力が必要である。[永井 隆]
『徳弘昭博著『脊髄損傷――日常生活における自己管理のすすめ』第2版(2001・医学書院) ▽菊池晴彦・平林洌監修、花北順哉ほか編『脊椎・脊髄外科の最前線』(2002・先端医療技術研究所)』

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六訂版 家庭医学大全科の解説

どんな病気か

 脊髄とは、脳と体をつなぐ中枢神経のことであり、この部位の損傷を脊髄損傷といいます。主として大きな外傷を受け、脊椎(せきつい)が骨折、脱臼(だっきゅう)を起こした際に生じます。脱臼や骨折がなくても、脊柱管(せきちゅうかん)(脊髄の入っている部位)が狭いところに外傷が加わることで脊髄損傷が生じる場合があります。外傷以外にも、ヘルニアや腫瘍が脊髄を圧迫した際も同じような病気・症状になります。

 脊髄に損傷があると、脳からの情報が正確に伝わらなくなり、障害部位以下の運動、知覚機能、自立神経が著しく障害されます。

原因は何か

 交通事故や高所からの転落事故などの高エネルギー外傷が原因の大半を占めます。若年層では、ダイビングやラグビー中のスポーツ外傷、高年齢層では転倒による頻度が多くなっています。

症状の現れ方

 脊髄のどのレベル(部位)で、どの程度の障害を受けたかで症状は大きく変わってきます。部位に関しては、損傷を受けた部位以下の脊髄が麻痺症状を起こすため、部位が脳に近いほど麻痺する部位は広範囲となります。

 程度に関しては、脳からの命令が完全に伝わらなくなって動きがなくなる完全型から、損傷部位に一部機能が残存している不完全型(少し筋力が弱くなるなど)があります。運動、知覚機能の障害だけではなく自律神経にも障害が及ぶため、排尿、排便、呼吸、血圧調節機能に障害が生じることがあります。

検査と診断

 上肢・体幹・下肢の知覚障害や筋力麻痺の範囲や腱反射の異常から、脊髄障害が起こっているレベルとその程度を調べます。骨の傷害や脱臼がある場合は、単純X線検査やCT検査で障害部位の診断が可能です。脊髄に対する圧迫の程度をみるためにはMRI検査が適しています。

治療の方法

 脊髄や神経は、骨や皮膚とは異なり再生能力の乏しい組織であり、完全に損傷された場合には再び機能を取り戻して修復されることはほとんどありません。このため、急性期の治療は、損傷した脊椎(骨)を修復し、安定させ、早期にリハビリテーションが受けられるようにすることが主体となります。

 損傷を受けた脊椎が不安定である場合には、体を動かすことで麻痺範囲がさらに広がる恐れがあるため装具や手術が必要となります。手術の目的は損傷部位を安定化させることであり、リハビリテーションを早期に開始することができます。障害部位が頸椎の場合は、呼吸障害、低血圧、徐脈などが生じ、集中治療室(ICU)での管理が必要となる場合があります。

 損傷した脊髄・神経の治療はいまだ基礎研究の段階であり、今後のさらなる発展が望まれます。

病気に気づいたらどうする

 脊髄損傷が疑われた場合には、すみやかに専門病院への搬送が必要です。損傷部をできるだけ動かさないように注意し、寝かせた状態で搬送します。受診する場合は、できれば専門医のいる病院を早期に受診するべきです。受診する科は整形外科か脳神経外科です。

 救命救急センターでは、これらの医師と連絡をとって治療にあたることが多いので、救急車を呼び、救命救急センターへ転送してもらうのがよいと思われます。

豊田 宏光, 中村 博亮

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世界大百科事典内の脊髄損傷の言及

【リハビリテーション】より

…一般に日常生活動作が可能で身辺自立のできる者は,身体障害者授産施設を含めて就労の道が開ける可能性があるが,身辺自立が困難で常時介護を要する者は,たとえ知的能力が高くても,現状では就労の機会を得ることは難しい。
[脊髄損傷のリハビリテーション]
 日本では年間1500~2000人の脊髄損傷患者が発生するといわれる。1970年度の厚生省の調査によると,外傷性脊髄損傷患者が約3万人,その他の脊髄麻痺患者が約3万9000人となっている。…

※「脊髄損傷」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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