中国の作家茅盾(ぼうじゅん/マオトウ)の長編小説。1931年10月より32年12月執筆。この間一部を雑誌に掲載。33年開明書店刊。1930年5月から7月までの上海(シャンハイ)を舞台に、製紙工場を経営する民族資本家呉蓀甫(ごそんぽ)の、金融市場と企業経営の場における対立抗争を軸として、主要登場人物の家族、親戚(しんせき)、友人のさまざまな動きや当時の近郊農村の状況を織り込んだ壮大な構成をもつ一大ロマン。主要登場人物だけでも50名に上る。中国近代小説における最高の達成であり、30年代左翼文壇、また茅盾自身の創作生活においてきわめて大きな意義をもつ。子夜とは夜の子(ね)の刻(午後11時から午前1時)の意。なお、初版本の扉に印刷された副題The Twilight : a Romance of China in 1930のTwilightを薄明とみるか薄暮とみるか、作品の解釈をめぐって諸説がある。
[白水紀子]
『竹内好訳『子夜』(『筑摩世界文学大系78 魯迅・茅盾』所収・1974・筑摩書房)』
出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
…初め,外国文学の紹介に力を注ぐかたわら,革命の実践に加わったが,革命に悩む知識人の青年を描いた長編《》を発表して作家生活に入った。やがて長編《子夜》を発表(1932)。国際都市上海を舞台に,農村恐慌と内戦のさなか,外国資本と労働運動という腹背の敵に攻撃されながら苦闘する若き民族資本家を描いたこの作品は,中国現代文学史上における最初の全体小説の傑作となった。…
※「子夜」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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