日本大百科全書(ニッポニカ) 「孽海花」の意味・わかりやすい解説
孽海花
げっかいか
中国、清(しん)末の長編小説。曽樸(そうぼく)作。当初は60回の構想であったが、1905年(光緒31)から数回に分けて雑誌などに発表、30回で中断し、28年三十回本にまとめられた。禍(わざわい)の海の花という名をもつ本書は、戦争、革命といった騒然とした清末の政界を背景に、実在人物をモデルとして、状元(じょうげん)に合格した金(きんいん)(実は洪鈞(こうきん))が、妓女(ぎじょ)出身の妾(めかけ)傅彩雲(ふさいうん)(実は賽金花(さいきんか))を連れてドイツに外交官として赴任し、帰国後病死するまでを、彩雲の情事などを絡めて描いたもの。当時の腐敗した社会に対する進歩的批判がうかがわれ、清末譴責(けんせき)小説の傑作の一つとされる。
[桜井幸江]
『松枝茂夫訳「孽海花」(『中国現代文学選集1 清末・五四前夜集』所収・1963・平凡社)』