安岳3号墳 (あんがくさんごうふん)
Anak-samhobun
朝鮮民主主義人民共和国,黄海南道安岳郡にある,三国時代高句麗の壁画古墳。1949年に発見され,同年中に発掘調査された。墓室は,南向きの入口から北に向かって,羨道,羨室,前室,後室の順序に連接する。墓主を埋葬した後室(玄室)には,東辺と北辺に,それぞれ回廊をめぐらす。前室は,3本の八角石柱をもって後室と画され,床面も一段低くなる。東・西にそれぞれ側室をもつが,床面は一段高くなる。各室ともに,隅三角持送り式の天井を示す。水磨された石灰岩の巨石で築かれた壁面には,被葬者夫妻の肖像画をはじめ,車馬行列図,各種の生活風俗図,装飾文様図など,豊富な内容の壁画が描かれる。出土遺物は,盗掘を受けて少なく,鉄槍,棺釘,棺材漆皮,人骨などにすぎない。前室の西側室の壁面に残る墨書銘から,永和13年(357)に69歳で死去した冬寿の墓であることがわかる。冬寿は,燕から高句麗に亡命した人物であるが,いっぽうで,墓主は,高句麗の美川王とする説もある。
執筆者:西谷 正
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安岳3号墳【あんがくさんごうふん】
1949年朝鮮民主主義人民共和国の黄海南道安岳郡安岳面兪雪里で発見された高句麗時代の壁画古墳。複雑な石室構造をもつ。石室には被葬者夫妻の座像,舞楽図,騎馬行列,文人・武人像,牛舎・馬厩や装飾文様が描かれ,壁面には,357年の墓碑銘ものこる。被葬者は高句麗に亡命した燕の武将冬寿とする説が有力である。2004年,高句麗遺跡群の一つとして世界文化遺産に登録。
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安岳3号墳
あんがくさんごうふん
Anak 3-hobun
北朝鮮の黄海南道安岳郡にある壁画古墳。主室は回廊に囲まれ,前・後面に八角柱が立つ。天井は三角持送り式である。墓室の全壁面に,主人公夫妻の居室,厨房,車庫などの日常生活が描かれ,回廊壁面に出行行列図が描かれる。壁画中「永和十三年……冬寿……」の墨書があり,墓の被葬者を冬寿とする説と高句麗の美川王とする説の2説がある。
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世界大百科事典(旧版)内の安岳3号墳の言及
【高句麗】より
…初期には主として積石塚が作られ,中国吉林省集安にある将軍塚が有名である。封土塚の壁画は,徳興里古墳や安岳3号墳など約50ヵ所でみられる。その内容は,初期には当時の生活風俗や家屋のようす,狩猟や戦争のようすが描かれ,後期には道教の影響による四神図が多くみられる。…
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