宋元学案(読み)そうげんがくあん

日本大百科全書(ニッポニカ) 「宋元学案」の意味・わかりやすい解説

宋元学案
そうげんがくあん

100巻。中国、宋元時代学術史。清(しん)の黄宗羲(こうそうぎ)の著作。全祖望(ぜんそぼう)の増補。黄宗羲(号梨洲(りしゅう))は明(みん)代の学術史である『明儒学案』を完成したあと、同じ方針の下に宋元時代の学術史に着手したが、完成しないうちに死去した。その子黄百家(ひゃっか)が父の業を引き継いだが完成できず、全祖望が独力で増補し完成させた。全氏の増補は全体の6、7割にもなっている。宋の学者胡安定(こあんてい)、孫泰山(そんたいざん)以下の学者を学派別に編集、学系表を掲げ、また伝記、学問について述べたのち、その学統に連なる人々をも示した一大学術史である。1838年(道光18)何凌漢(かりょうかん)が浙江(せっこう)で刊行したが、戦禍により焼失した。のち北京(ペキン)でも刊行されたが、1879年(光緒5)王梓材(おうしざい)、馮雲濠(ひょううんごう)、何紹基(かしょうき)により校訂刊行され、世に広まった。

[疋田啓佑]

『衣川強編『宋元学案・宋元学案補遺 人名字号別名索引』(1974・京都大学人文科学研究所)』

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改訂新版 世界大百科事典 「宋元学案」の意味・わかりやすい解説

宋元学案 (そうげんがくあん)
Sòng yuán xué àn

中国,宋・元時代の学術史を記した本。全100巻。1学案ごとに表を掲げ,当該の学者の師友門人を列挙し,学派の源流と展開を図示する。そのあと略伝著述の抜粋とつづき,付録として逸話,後人の評をのせる。いわば列伝風の思想史原著は明末の黄宗羲(こうそうぎ)であるが,未完のうちに没したため息子の黄百家が続修,しかしなお完成せず,清の全祖望が引きつぎ,宗羲の玄孫黄稚圭(こうちけい)らの校訂をへて初めて完成した。この書を補った《宋元学案補遺》とともに,宋・元学術史研究の基本資料である。
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世界大百科事典(旧版)内の宋元学案の言及

【黄宗羲】より

…新しい清王朝には出仕しなかったが,康熙帝が明代史を編纂しようとしたときには,弟子の万斯同と子の黄百家を送り史館に入れて協力させた。彼の著述は,きわめて多いが,最も有名なのは,明代学術史である《明儒学案》62巻,宋・元学術史である《宋元学案》100巻(全祖望との共著)で,両書は宋代以後の学術思想を論ずる場合に必須のものである。また,《明夷待訪録(めいいたいほうろく)》1巻は,鋭い君主制批判と民本主義的内容のために,清末の改革運動のなかで再発見され,これによって黄宗羲は〈中国のルソー〉と称された。…

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