改訂新版 世界大百科事典 「宗主国従属国」の意味・わかりやすい解説
宗主国・従属国 (そうしゅこくじゅうぞくこく)
suzerain state, vassal state
国家の一部が独立しようとする段階で,制限された主権を本国の国内法によって認められる場合,本国が宗主国と呼ばれて主権国家であり続けるのに対し,独立しようとする国家の一部は,従属国,従国,付庸国などと呼ばれる半主権国である。ただ,従属国は,同じ半主権国であっても,被保護国(保護国・被保護国)と違って,本国の一部と考えられるから,宗主国が行う戦争に巻き込まれるし,宗主国が締結する条約に拘束される。1949年に独立する以前のモンゴルは,中国の宗主権下にあったとみられる。1829年から78年までのモルドバ,ワラキア,セルビア,1878年から1908年までのブルガリアは,いずれもトルコを宗主国とした従属国の先例である。エジプトも1840年から83年までは明らかにトルコの従属国であったが,83年から1914年までの法的地位は,やや不明確である。現在,従属国は存在しない。
執筆者:松田 幹夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報