改訂新版 世界大百科事典 「保護国被保護国」の意味・わかりやすい解説
保護国・被保護国 (ほごこくひほごこく)
弱国が,主権の重要部分を委譲することによって強国の保護下に屈するときにみられる制度で,強国が保護国と呼ばれて主権国家であり続けるのに対し,弱国は,被保護国と呼ばれ,半主権国となる。そして,このような関係を設定する条約を,保護条約という。しかし,被保護国は,保護国の一部となるわけではないから,保護国が第三国との間で戦争を始めても,当然に当事国とはならない。また,保護国が第三国と締結する条約に当然には拘束されない。1905年の日韓保護条約により10年まで日本を保護国とした韓国,フランスを保護国とした1881年から1956年までのチュニジアおよび1912年から56年までのモロッコなど,被保護国の先例は多い。フランスは,1918年条約でモナコの主権および領土を保障した。しかし,これをもって,フランスはモナコを被保護国としたのではないとされる。シッキムに対するイギリスの保護権は,1890年条約で清国により承認された。インドは,1950年のシッキムとの条約でイギリスの立場を承継したが,75年,シッキムはインドの一州となった。被保護国が現存するかどうかであるが,ピレネー山脈の中にある小国アンドラは,フランス,スペイン両国の共同保護権の下にあるとしてよさそうである。
→宗主国・従属国
執筆者:松田 幹夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報