宗安小歌集(読み)そうあんこうたしゅう

改訂新版 世界大百科事典 「宗安小歌集」の意味・わかりやすい解説

宗安小歌集 (そうあんこうたしゅう)

歌謡集。《閑吟集》につぐ中世小歌の集成。序・跋によれば,〈沙弥宗安〉が編み,〈久我(こが)有庵三休〉に請うて浄書せしめた逸名の巻子1巻本。他に伝本はなく,孤本である。1931年に笹野堅が《室町時代小歌集》と名づけて刊行紹介したが,編者の宗安が茶人万代屋(もずや)宗安であること,手書者三休が久我大納言敦通であることが考証され,本書の成立が1599年(慶長4)以後数年の間であると推定されるに及んで,書名呼称も改められた。所収歌謡は主として男女の愛をうたった221首(うち2首重複),《閑吟集》と類歌関係にあるもの40首余りであるが,律調においてしだいに新しさを加え,同時代の《隆達小歌》(隆達節)とともに近世調への展開を跡づけている。しかし《隆達小歌》ほどには抒情の世界を局限せず,のびやかに謡い,踊り歌をはじめとする地方歌謡と密接な交渉を有する点などに本書の特徴があるといえる。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「宗安小歌集」の意味・わかりやすい解説

宗安小歌集
そうあんこうたしゅう

近世初期成立の小歌集。一巻。『閑吟集』(37首の共通歌を有す)以後、隆達節(りゅうたつぶし)小歌よりはやや先行する中世小歌の集成。編者の宗安にあてるべき人物として諸説あるが、不詳。序・奥書によると、清書したのは久我有庵(こがゆうあん)すなわち久我敦通(あつみち)(1565―1624)。中世小歌と近世小歌との交替期にあたる慶長(けいちょう)年中(1596~1615)の成立か。所収歌数220首。ほとんどが二句・四句の短詩型で、「夢には来てお寝(よ)れ/それに浮名はよも立たじ」のごとき恋の歌が大部分を占め、「濡(ぬ)れぬさきこそ露をもいとへ/濡れてののちはともかくも」のごとき七七七五の近世小歌調もみえ、孤本(こほん)ながら歌謡史研究上貴重な資料。1931年(昭和6)笹野堅(ささのけん)の紹介になったもので、原本題名はなく、当初は『室町時代小歌集』とよばれた。

[徳江元正]

『北川忠彦校注『新潮日本古典集成 閑吟集 宗安小歌集』(1982・新潮社)』

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「宗安小歌集」の意味・わかりやすい解説

宗安小歌集
そうあんこうたしゅう

江戸時代初期の小歌集。沙弥宗安撰。1巻。無名巻子本 (かんすぼん) として伝えられ,1931年『室町時代小歌集』として紹介,複製されたのが,のち『宗安小歌集』と呼ばれるようになった。宗安については,万代屋渡辺宗安,堺の銭屋松江宗安,『鹿苑日録』にみえる宗安など諸説がある。成立年代についても『閑吟集』 (1518) と『隆達小歌集』 (93~1605) の中間に位置するという見方や,もう少し年代が下り,『隆達小歌集』前後とみる説がある。所収の小歌は 221首 (2首重複) 。『閑吟集』などとの共在歌も含まれるが,独自の小歌が多く,室町時代末期から江戸時代初期にかけての小歌の貴重な資料。

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世界大百科事典(旧版)内の宗安小歌集の言及

【日本音楽】より

…中世後期の民謡は,〈小歌〉と呼ばれるものの中に見られる。《閑吟集》《宗安小歌集》《隆達小歌集》の中には,民謡的な小歌が相当含まれている。しかし,純粋な民謡を集めたものとしては,中国山地の田植歌を集めた《田植草紙》が代表的なものであろう。…

※「宗安小歌集」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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