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宗教と和解に関する動向 しゅうきょうとわかいにかんするどうこう

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知恵蔵2015の解説

宗教と和解に関する動向

2007年8月24日付の米科学誌『サイエンス』は、人類学者スコット・アトラン、政治学者ロバート・アクセルロッドらの「紛争解決への聖なる障壁」と題する論文を掲載した。同論文によると、従来の外交政策軍事戦略は、敵が合理的な行動を取ることを前提に考えられてきた。しかし、自爆テロにみられる「献身的な行動」が示すように、その前提は通用しなくなった。人々は、家族や国家の幸福・安寧や宗教、名誉、正義といった価値への献身が絶対的なものと考えており、それらは経済的・物理的な価値に勝るという。そこで、世界の紛争解決には、異文化における(宗教を含む)「聖なる価値」に対する理解を示すとともに、物質的な利益を伴わない「象徴的な譲歩」が必要である、と主張する。同論文は、宗教的な紛争の解決に対しても示唆的である。 ロシア正教会と在外ロシア正教会の関係修復にみられる、宗教内の和解の動きとは別に、異宗教の平和共存に向けての動きもみられる。07年10月11日、多数派・少数派、保守派・リベラル派も含め、イスラム各派の聖職者や法学者ら138人が、連名で公開書簡を発表した。書簡は、ローマ法王ベネディクト16世をはじめとするキリスト教各派の指導者にあてられたもので、聖書やコーランの一節を引用しながら、両宗教が同じ神に対する信仰と隣人愛に基づくとして、その平和共存を強調している。同書簡は、ヨルダンの王立イスラム思想研究所を中心とする長い議論の結果であり、既にユダヤ教徒あての公開書簡も準備中であるという。暴力やテロリズムに対する書簡の実質的効果については、疑問視する声もあるが、宗教間対話の大きな一歩といえる。 07年4月27日から9月23日まで、英国ロンドン大英博物館で「聖なるもの」と題する展覧会が開催された。同展覧会では、キリスト教、ユダヤ教、イスラムの聖典に関する写本が数多く展示された。展示された写本の数々は、現状とは異なり、中東地域において3宗教が共存していた時代の面影を残している。さらには、写本の詳細をみると、3宗教が互いに影響を及ぼしあっていたことも理解できる。同展覧会は、宗教の共存をイメージさせるものとして重要であろう。

(岩井洋 関西国際大学教授 / 2008年)

出典|(株)朝日新聞出版発行「知恵蔵2015」
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