(読み)エン

精選版 日本国語大辞典 「宛」の意味・読み・例文・類語

えんヱン【宛】

  1. [ 1 ] 〘 形容動詞ナリ活用タリ 〙 そっくりそのままであるさま。
    1. [初出の実例]「宛(エン)たる彼の大入道面影は至る処に存在して」(出典最暗黒之東京(1893)〈松原岩五郎〉二〇)
  2. [ 2 ] 中国地名。現在の河南省南陽。春秋時代の楚の街で、秦代に県となった。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

普及版 字通 「宛」の読み・字形・画数・意味


常用漢字 8画

[字音] エン(ヱン)・ウツ
[字訓] かがむ・まがる・ふくよか・さながら・あたかも

[説文解字]

[字形] 会意
宀(べん)+(えん)。〔説文〕七下に「艸を屈めて自らふなり」とするが、そのような形象の字ではない。宀はは人が坐して、膝のふくよかな形。中に坐して神霊を拝する形であろう。

[訓義]
1. かがむ、まがる。
2. ふくよかなさま、うつくしい。
3. さながら、そのままの姿勢、あたかも。
4. 鬱の音でよみ、むすぼれる。

[古辞書の訓]
名義抄〕宛 カタチ・アタカモ・シヌベシ・マタシ 〔字鏡集〕宛 アタハス・シヌベシ・シヘタリ・ワヅラフ・カカル・カタチ・シノグ・ウラム・アタカ・ツカヌ・マダシ・ヰル・ワク・ワカル・スム・タシナム

[声系]
〔説文〕に宛声として・婉など五字を録する。おおむね宛屈・宛鬱の意をもつ字である。

[語系]
宛・婉iuan、腕uanはふくよかにまがる意。委・逶iuai、紆・iuaもゆるやかにめぐる意があり、同系の語である。

[熟語]
宛気宛結宛延宛宛宛蜒宛乎宛虹・宛似宛爾宛順宛如宛舌・宛然宛暢・宛転宛媚宛曼宛妙・宛麗・宛
[下接語]
宛・粤宛・曲宛

出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報

世界大百科事典(旧版)内のの言及

【南陽】より

…人口154万(1994)。宛と呼ばれた。交通の要衝にあり,西は関中,北に行けば洛陽,北東に進めば開封,東に向かえば淮水流域,南は漢水を経て長江(揚子江)に通じ,湖北,湖南,四川,江蘇と結ばれる。…

※「宛」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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