宛転(読み)エンテン

デジタル大辞泉 「宛転」の意味・読み・例文・類語

えん‐てん〔ヱン‐〕【宛転】

[ト・タル][文][形動タリ]《「えんでん」とも》
言葉・声などがよどみなく、なめらかに発せられるさま。
「―と何かしゃべり出した」〈芥川湖南の扇〉
緩やかな曲線を描くさま。特に、眉がゆるく弧を描いているさま。
八字細眉―たり」〈浄・天智天皇

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精選版 日本国語大辞典 「宛転」の意味・読み・例文・類語

えん‐てん ヱン‥【宛転】

〘形動タリ〙 (「えんでん」とも)
① (「宛」は、ねころぶの意) ころびまわるさま。寝返りをうつさま。
※性霊集‐六(835頃)天長皇帝為故中務卿親王講法花経願文「哀哉悲哉、雨絶雲端、一鳧蜿転」 〔楚辞‐哀時命〕
② (「宛」は、まがるの意) ゆるやかに動きまわるさま。
(イ) ゆるやかな曲線をえがいて曲がるさま。
※俳諧・俳諧世説(1785)三「宛転たる環(たま)の如し」 〔張若虚‐春江花月夜詩〕
(ロ) 眉がゆるく弧をえがいているさま。また、眉がゆるやかに動くさま。美人の眉の形容
※和漢朗詠(1018頃)下「嬋娟たる両鬢は秋の蝉の翼、宛転たる双蛾は遠山の色〈白居易〉」 〔劉希夷‐代悲白頭翁詩〕
(ハ) (「蜿転」とも) 虫などが、ゆるやかにくねって動くさま。
※三教指帰(797頃)下「蠢蠢万虫、宛転相連」
(ニ) 音楽、言葉、声、また、話などが調子よく、すらすらとよどみないさま。
※凌雲集(814)和菅清公秋夜途中聞笙〈嵯峨天皇〉「新声宛転遙夜振、妙響聯綿遠風沈」
読本英草紙(1749)一「奥の一間より嬌声宛転(ヱンテン)(〈注〉サヘヅルゴトク)とひびきて」

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普及版 字通 「宛転」の読み・字形・画数・意味

【宛転】えん(ゑん)てん

ゆるやかにめぐる。女の眉の美しいさま。唐・劉希夷〔白頭を悲しむ翁に代る〕詩 宛轉たる娥眉、能く時ぞ 須臾(しゆゆ)にして鶴髮、亂れて絲の如し

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