宮廷政治(読み)きゅうていせいじ

改訂新版 世界大百科事典 「宮廷政治」の意味・わかりやすい解説

宮廷政治 (きゅうていせいじ)

政治的決定が被治者と隔絶した〈宮廷〉においてなされる政治をいう。宮廷政治は,被治者が政治勢力として政治過程に関与することがなく,また,支配層も君主あるいは独裁者の対抗勢力になりうるだけの力をもっておらず,君主(あるいは独裁者)の周囲に集まって宮廷貴族宮廷官僚層を形成している場合に成立する。この場合,宮廷内の政治過程が被治者に公開されていないため,政治的決定は君主(あるいは独裁者)の命令の形で表現される。宮廷政治においては,公的な制度化がなされないために,政治的利害が宮廷内部に凝集することになるから,政治的対立が人的対立と未分化のまま展開する。また宮廷貴族,宮廷官僚にとっても,個々人の私的利害と,彼が代表する政治的利害,さらに一国全体の利害との境界は不分明にならざるをえない。このため,強大な権力をもっている君主の寵愛をめぐって対立が生じる場合にせよ,有力な人物間で主導権争いが起こる場合にせよ,宮廷内にはつねに陰謀中傷,裏切り,暗殺等が渦巻くことになる。したがって宮廷政治においては,人事能力がきわめて重要な政治的能力とみなされる。また社会的・政治的矛盾も,宮廷内の対立に転化するために,しばしば宮廷革命の形で権力の交替が行われる。一方,権力から疎外されている被治者にとっては,宮廷内のドラマは権力の醜聞として示されることになる。このような宮廷政治は,古くは古代エジプト,古代中国等の専制政治にさかのぼることができるが,絶対王政下の西欧各国(あるいは現代の軍事独裁国家)におけるように,被治者が政治勢力として自己形成を遂げつつある場合は,宮廷政治家には,国内の諸問題を先取りし,場合によっては対外戦争を行って,被治者の不満を処理する手腕が要求される。宮廷がこれらの不満にこたえられなければ,宮廷政治の崩壊に結びつくからである。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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