富岡恋山開(読み)とみがおかこいのやまびらき

改訂新版 世界大百科事典 「富岡恋山開」の意味・わかりやすい解説

富岡恋山開 (とみがおかこいのやまびらき)

歌舞伎狂言。通称《二人(ににん)新兵衛》。初世並木五瓶作。1798年(寛政10)正月,《着衣始小袖曾我(きそはじめこそでそが)》の二番目世話狂言として江戸桐座初演玉屋新兵衛を3世市川八百蔵,出村新兵衛を3世沢村宗十郎,三国屋小女郎・おえんを3世瀬川菊之丞。元禄(1688-1704)ごろからの古い俗謡に歌われた越前三国の湊の遊女小女郎と玉屋新兵衛の情話に取材。五瓶は大坂で吾八と名のっていた1775年(安永4)に《三国湊名所帷子》でこの題材を扱っている。そのときは1755年(宝暦5)作の院本《玉谷新兵衛出村新兵衛 三国小女郎曙桜》の世界に拠ったものであった。それを江戸風に深川八幡宮の山開きという3月の風俗を当て込んで脚色したもの。三十間堀の藍玉屋の養子玉屋新兵衛は,元の主人千葉家の侍鵜飼兵太夫の娘で深川三国屋の女郎となっている小女郎と深い仲となり,小女郎の兄で悪者の九十郎を殺害する。一方,新兵衛と張り合って小女郎を身請けしようとする宇田川町の木綿問屋出村新兵衛は実は玉屋新兵衛の許嫁おえんの兄で,2人の新兵衛が男同士の達引(たてひき)となるという内容。松井由輔をはじめとする江戸作者の協力があったため,筋の単純な五瓶の世話狂言としてはコクがあり,ことに鵜飼九十郎や産毛金太郎という突飛な性格人物が,主殺しを題材とした陰惨な内容に色彩を添える。江戸,大坂を問わず脚色・改題されながら再演された。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典 「富岡恋山開」の解説

富岡恋山開
とみがおか こいのやまびらき

歌舞伎浄瑠璃外題
作者
並木五瓶(1代)
初演
寛政10.1(江戸・桐座)

出典 日外アソシエーツ「歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典」歌舞伎・浄瑠璃外題よみかた辞典について 情報

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