改訂新版 世界大百科事典 「対日援助見返資金」の意味・わかりやすい解説
対日援助見返資金 (たいにちえんじょみかえりしきん)
第2次大戦後,アメリカの対日援助について,それに見合う円換算額を他の財政資金とは別に積み立て,経済の再建,通貨の安定を図るために運用した特別会計。見返資金ともいう。正称は米国対日援助見返資金特別会計といい,ドッジ・ラインの一環として1949年4月GHQの指令に基づき,〈米国対日援助見返資金特別会計法〉により,日本銀行に政府名義の〈対日援助見返資金特別勘定〉を設置した。援助そのものは52年度で終わったが特別会計は53年7月まで存続し,以降その会計の資産は新設の産業投資特別会計に引き継がれた。見返資金の運用計画については内閣の閣議決定後,GHQの承認を必要とした。また運営についても具体的な案件ごとにGHQに申請し,審査のうえ諾否が決定された。見返資金は収入総額4158億円で,そのうち国債買入れなど経済再建および安定のために1927億円,国鉄(現JR),公共事業など公企業に対して1010億円,海運,電力など私企業に対して997億円が支出された。なお,アメリカの対日援助は贈与ではなく,日本の債務であることが講和後確認され,返済の交渉が54年以来続けられ,61年に妥結,62年度以降その元利が支払われた。
→ガリオア・エロア資金
執筆者:黒田 満
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報