日本大百科全書(ニッポニカ) 「岩合光昭」の意味・わかりやすい解説
岩合光昭
いわごうみつあき
(1950― )
動物写真家。東京都足立区生まれ。1973年(昭和48)法政大学経済学部卒業。大学在学中の1970年、動物写真家の父、岩合徳光(とくみつ)(1919―2007)の取材旅行に同行し、南アメリカのガラパゴス諸島と東アフリカの地を訪れて自然の驚異に圧倒され、自然を被写体にした写真家を志す。大学卒業と同時にフリーランスの写真家として活動を始め、以来、地球上のほとんどの地域で取材を行う。「自然の美は、自然そのもののなかにしかみいだせない。野生動物の美も、自然のなかにこそある」との考えから、自らを大自然のなかにおき、徹底的な生態研究と観察に基づき、被写体となる野生動物の姿を記録しつづける。1977年最初の個展「ロッキーの動物たち」を東京・原宿のコンタックスサロンで開催。1980年『アサヒグラフ』誌に連載された「海からの手紙」で木村伊兵衛写真賞を受賞する。
1982~1984年タンザニアのセレンゲティ国立公園に家族とともに移り住んで撮影を続け、『セレンゲティ』(1984)、『サバンナからの手紙』(1985)を出版。両書は1985年の日本写真協会年度賞、講談社出版文化賞を受賞する。1989年(平成1)、ザトウクジラを追ったハワイ―アラスカ間の取材のためビデオカメラを使用する。以後、野生動物の撮影にビデオカメラも使用し、写真集と並行してビデオソフトの制作を手がけるなど、多彩な展開をみせる。作品は『ナショナル・ジオグラフィック』National Geographic誌をはじめ海外でも多くのメディアに紹介され、高い評価を得る。
1992年、個展「ネイチャー・ワールド 動物写真家岩合光昭の世界」を川崎市市民ミュージアム、西武百貨店(茨城県つくば市)、名鉄百貨店(名古屋市)ほかで開催。1997年、笠間日動美術館(茨城県笠間市)ほかで個展「写真家 岩合光昭のスノーモンキー ニホンザルに見る日本の四季」を開催。野生動物の貴重な姿を永久に劣化させることなく記録に残すため、近年はデジタル・カメラによる撮影にも取り組む。
おもな著書に『愛するねこたち』(1978)、『北極』(父徳光との共著。1978)、動物写真では珍しく全世界でベストセラーになった『おきて』(1986)、身近な動物に注目した『ニッポンの犬』(妻日出子との共著。1988)、『ペンギン大陸』(1992)、『ライオン家族』(1995)、『ニッポンの猫』『地中海の猫』(ともに2000)などがある。
[関次和子]
『『愛するねこたち』(1978・講談社)』▽『『セレンゲティ――アフリカの動物王国』(1984・朝日新聞社)』▽『『サバンナからの手紙』(1985・朝日新聞社)』▽『『おきて――アフリカ・セレンゲティに見る地球のやくそく』(1986・小学館)』▽『『ペンギン大陸』(1992・小学館)』▽『『ライオン家族』(1995・小学館)』▽『『生きもののおきて』(1999・筑摩書房)』▽『『ニッポンの猫』『地中海の猫』(ともに2000・新潮社)』▽『『ホッキョクグマ』(2003・新潮社)』▽『『猫さまとぼく』(2004・岩波書店)』▽『岩合徳光・岩合光昭著『北極』(1978・講談社)』▽『岩合光昭・岩合日出子著『ニッポンの犬』『スノーモンキー』(新潮文庫)』▽『「ネイチャー・ワールド――地球に生きる」(カタログ。1997・東京都写真美術館)』