広西(チワン族自治区)(読み)こうせい

日本大百科全書(ニッポニカ) 「広西(チワン族自治区)」の意味・わかりやすい解説

広西(チワン族自治区)
こうせい / カンシー

中国南西部にあるチワン(壮)族の自治区。東は湖南(こなん/フーナン)、広東(カントン)、北は湖南、貴州(きしゅう/コイチョウ)の各省、西は雲南(うんなん/ユンナン)省とベトナムに接し、南は北部湾(トンキン湾)に臨む。南寧(なんねい/ナンニン)、柳州(りゅうしゅう/リウチョウ)、桂林(けいりん/コイリン)、梧州(ごしゅう/ウーチョウ)、北海(ほっかい/ペイハイ)、防城港(ぼうじょうこう/ファンチョンカン)、欽州(きんしゅう/チンチョウ)、貴港(きこう/コイカン)、玉林(ぎょくりん/ユイリン)の9地級市のほか5地区に分かれ、地区のなかには憑祥(ひょうしょう/ピンシヤン)市をはじめ10県級市、59県、12自治県がある。区都は南寧市。面積約23万6660平方キロメートル、人口4723万6100(2000)。住民は、全人口の約3分の1を占めるチワン族のほか、漢族ヤオ族ミャオ族、トン族、ムーラオ族、マオナン族、回族、イ族、スイ族、キン族、コーラオ族など多くの民族が居住する。

 地形は、四周を山地に囲まれているため広西盆地と称される。北部から東部にかけては平均1500メートル前後の山地が雁行(がんこう)状に連なり、長江(ちょうこう/チャンチヤン)(揚子江(ようすこう/ヤンツーチヤン))水系と珠江(しゅこう/チューチヤン)水系の分水界(ぶんすいかい)をなしている。低平な分水界を掘って二大水系を結んだ霊渠(れいきょ)(興安(こうあん/シンアン)運河ともいう)も北東部にある。珠江水系南側の西部と南部は500~1000メートルの低山と丘陵性の山地である。これらの山地は北の雲貴(うんき/ユンコイ)高原に連なるため石灰岩地帯であり、カルスト地形が発達しており、天下の奇勝と称される桂林、南寧郊外の伊嶺岩鍾乳洞(いれいがんしょうにゅうどう)などの名勝が多い。また伏流を利用した用水路などもある。気候は、北回帰線が中部を通る低緯度帯にあるため、一般に亜熱帯から熱帯気候に属し冬も暖かい。雨は夏に集中する。また夏の台風や雷雨を伴う大風は農作物に被害を与えることが多い。

 かつては降雨期の集中と、石灰岩地質による水漏れが多いため、農業生産が一定しない地域であったが、水利施設の改良により安定をみるに至っている。北西部は畑作地帯、南東部は水田で、作物は一般に一年二作か二年三作である。おもな作物は米、トウモロコシ、サツマイモ、冬小麦で、商品作物としてサトウキビラッカセイ、タバコ、アサなどがある。東部と南部には、コーヒー、コショウ、サイザル麻、ゴム、バナナ、パイナップルなどの熱帯・亜熱帯性の作物も多い。山地にはスギ、チークなどの木材、漆、アブラギリ、漢方薬材も産出する。北部湾は国内有数の漁場で、エビ、スルメイカイトヨリダイなどの漁獲が多い。さらに真珠、カキの養殖も行われている。海岸には塩田も分布する。錫(すず)、マンガン、アンチモン、ウランをはじめ地下資源も多く、北部湾の洲(いしゅう)島周辺の海底油田からの本格的な採油も始まっている。南寧、柳州を中心に機械、冶金(やきん)、鉄鋼、化学などの近代工業が発展している。伝統工業では麻布、紙、磁器、壮錦などがある。

 交通は湘桂(しょうけい)、黔桂(けんけい)、黎湛(れいたん)、南昆、南防の5鉄道が隣接する各省と通じ、湘桂鉄道は友誼関(ゆうぎかん/ユーイーコワン)でベトナムと結ばれている。鉄道が通じていない地域には、道路網が発達し、鉄道にかわって長距離定期バスが住民の足となっている。バスと並んで珠江水系の水運も重要であり、区都の南寧まで広州(こうしゅう/コワンチョウ)から定期便があり、さらに乗り換えて上流の百色(ひゃくしょく/パイソー)まで通じる。航空路は南寧を中心に北京(ペキン)、上海(シャンハイ)、広州、昆明(こんめい/クンミン)など国内各地およびベトナムを結んでいる。また桂林にも空港があり観光の便となっている。海運は北海が主たる門戸であったが開放経済の進行とともに防城港が開発され、西南地区の門戸として発展が期待されている。また市制も施行された。

[青木千枝子・河野通博]


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