中国、華南(かなん/ホワナン)地方最大の川。別称粤江(えっこう/ユエチヤン)。西江(せいこう/シーチヤン)、北江(ほくこう/ペイチヤン)、東江(とうこう/トンチヤン)の三大支流があるが、もっとも長い西江を主流としている。全長2129キロメートル、流域面積は42万5700平方キロメートル。西江は雲南(うんなん/ユンナン)省から流出する南盤江(なんばんこう)を源流とし、東流する途上で北盤江をあわせて紅水河(こうすいが/ホンショイホー)とよばれ、さらに柳江(りゅうこう)をあわせて黔江(けんこう)、桂平(けいへい/コンピン)で郁江(いくこう)をあわせて潯江(じんこう)と名を変え、梧州(ごしゅう/ウーチョウ)で桂江(けいこう/コイチヤン)と合流したのち西江と称する。広州(こうしゅう/コワンチョウ)市西方の三水(さんすい/サンショイ)以後は珠江デルタを経て磨刀門(まとうもん)で海に注ぐ。西江の流域面積は珠江流域面積の約78%を占める。西江の上・中流域は中国でも著名な石灰岩地帯であり、名勝が多く、石灰岩峡谷の黄茅(こうぼう)峡、大藤(だいとう)峡、桂林(けいりん/コイリン)を中心とした景勝地がある。また支流の江(りこう)上流では霊渠(れいきょ)により長江(ちょうこう/チャンチヤン)(揚子江(ようすこう/ヤンツーチヤン))水系と結ばれている。北江は江西(こうせい/チヤンシー)・広東(カントン)両省の境界をなす大庾嶺(だいゆれい/ターユイリン)に発し、南流して本流は洪奇瀝(こうきれき)で海に注ぐ。全長582キロメートル。東江は江西省南部に発し、南西流して最後は虎門(こもん/フーメン)で海に注ぐ。全長503キロメートル。
以上の3支流は実際は三つの独立の河川であるが、珠江デルタにおいて網状に分岐し相互に連なっている。夏季の降水量が多量となるため、水量も夏に増加する。また夏季には台風の襲来が多く、これに伴う大雨によって洪水の発生をみることも多い。洪水の被害は平坦(へいたん)なデルタ地帯に大きい。しかし全般的に水量が豊富であるところから航運の条件に恵まれ、通年航行距離は1200キロメートルに及ぶ。発電利用の面では南盤江から紅水河にかけて天生橋、岩灘、魯布格(ルプゲ)、大化、悪灘など階段状に11のダムが建設され、また郁江の西津(せいしん)、桂江の昭平、北江の乳源、滃江(おうこう)などにも発電所があり、地下河川利用の発電所もある。
[青木千枝子・河野通博]
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中国,華南地区最大の河川で,西江,北江と東江が集まり合流したものである。旧称は粤(えつ)江。中国内での流域面積は約45万km2で,支流が多く水路も輻輳(ふくそう)している。高温多雨の地方が主たる集水域であるため水量が豊富で,長江(揚子江)にはわずかにおよばないものの黄河の7倍の水量を誇る。また雨季が長いため,増水期間も4~9月と長く水上交通に有利である。しかし長江のように中下流部に大雨時の流路の増水を一時的にためて流出量を調節する湖泊がないため,台風や豪雨の襲来時は,降雨がそのまま流れ出るので洪水になりやすい。流域は植生が豊かで,石灰岩の分布域も広いので,黄河や長江と異なり含砂量は少なく,水も透明で黄濁していない。西江の流路が最も長く2129kmに達し,流域面積は珠江流域の約80%を占めている。本流の水源は雲南省北東部の烏蒙山地で南盤江と呼ばれる。南盤江は北盤江,柳江,鬱江と順に合流しながら,紅水河,黔(けん)江,潯(じん)江と名を変え,広東省に入り桂江と合流したのちに西江と呼ばれる。西江は羚羊峡を経た後,多くの支流に分流して珠江三角州内を流れるが,本流は磨刀門より南海に注ぐ。北江は広東省北部の交通の大動脈で,全長は582km,上流部は武水と湞水である。英徳,清遠などを経て,三水付近で西江と合流し,洪奇瀝より南海に注ぐ。東江は全長523km,上流は定南水で広東省東部の交通の大動脈であり,虎門より海に注ぐ。
珠江水系は華南地区の基幹交通路で,本・支流の舟運距離が約3万kmに達する。西江では中型船は梧州まで,小型船は南寧,柳州まで遡航できるうえ,鬱江に沿って百色に達することができる。北江では解放後支流と合わせて2100km余の航路が整備され,各地に埠頭が建設された。東江では竜川まで60トン級の,支流の西支江,背嶺江などへは30トン以下の機帆船の航行が可能である。河口から広州市の黄浦港まで2万トン級の大型商船が航行できる。
執筆者:林 和生
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出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…(1)粤北山地 北東~南西方向に南嶺山脈が走り,石坑崆(1902m)をはじめ,1500mをこえる山嶺がいくつもそびえる。この山脈は華中と華南の分界として知られるが,珠江水系と長江水系との分水嶺でもある。山脈中の大庾嶺を越えて古くより中原に至る陸路が通じ,南宋代にはとくに重視されていた。…
※「珠江」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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