貨物輸出代金決済期間が船積み後1年を超える輸出を延払輸出という。延払輸出の対象となるのは,おもにプラント類,船舶など契約金額が巨額でかつ納期が長い資本財である。輸入者が支払を繰り延べて行うことが〈延払いdeferred payment〉といわれるゆえんだが,輸出者(サプライヤー)は輸入者(バイヤー)に対して信用の供与(5年未満が中期,5年以上が長期)を行う。信用供与の方法は輸出者から輸入者に対する直接のサプライヤーズ・クレジットが一般的で,これは,輸出者は輸出信用供与機関(日本輸出入銀行,海外経済協力基金)から資金を借り,輸入者から輸出代金を回収するごとに返済するという方法である。このほか,輸出信用供与機関が輸入者に対して融資する場合(バイヤーズ・クレジット)や,輸入国の金融機関に融資する場合(バンク・ローン)もある。
輸出延払いの相手方は外貨不足に悩む発展途上国が圧倒的に多い。政府開発援助と輸出信用の供与は密接な関係をもっており,おもな先進国は政府援助機構の構築と並行して輸出信用供与機関を整備してきた。輸出信用供与機関の創設が本格化したのは第2次大戦後であるが,アメリカでは,1934年にワシントン輸出入銀行(1968年アメリカ輸出入銀行に改称)を創設して,一次産品価格の低下で外貨不足にあえぐ中南米諸国向けの輸出振興に力を注いでおり,輸出延払信用供与は沿革的には両大戦間にさかのぼる。主要先進国が輸出振興のための金融支援(export promotion credit)の措置を強化して輸出市場の拡大を図った結果,いろいろな弊害が生じてきた。輸出競争の激化を映して過度に輸出信用条件を引き下げるなどの問題が,70年代以降顕著になってきた。このためOECDの場で輸出信用供与条件の基準の取決めや低利融資自粛などの申合せが行われ,紳士協定が締結されている。
→経済協力
執筆者:松井 謙
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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