経済協力
けいざいきょうりょく
economic cooperation
国際間の経済上の協力をいい、とくに先進国の開発途上国に対する経済協力をさすことが多い。この場合、資金の流れを通しての協力、貿易を通しての協力、さらに技術や教育面での協力などを含んでいる。
資金面での協力は、通常、経済援助といわれるもので、これを担当している経済協力開発機構(OECD)の開発援助委員会(DAC(ダック))の定義に従えば、(1)政府開発援助(ODA)(二国間贈与、無償資金供与、技術協力、有利な条件での直接借款、国際機関への出資・拠出など)、(2)その他の政府資金(1年を超える輸出信用、直接投資金融、国際機関への融資など)、(3)民間資金(1年を超える輸出信用、直接投資、国際機関に対する融資、非営利団体による贈与など)からなっている。本来、私的利潤動機で左右される民間資金を援助に含めることには問題があるが、資金の利用可能性やその機能に着目すれば、これもまた開発途上国に貢献しているといえよう。
貿易面での協力とは、先進国が関税、非関税両面において輸入障壁を軽減し、開発途上国の商品に市場を開放する政策をさしている。1997年後半以降、深刻化したアジアの通貨・金融危機に際しても、資金的協力の規模、被協力国の構造改革などに焦点があてられているが、最終的には融資返済のために輸出拡大が不可欠であり、これを可能とする先進国、とくに日本の輸入拡大を通しての協力が重要である。
国際間の経済上の協力という点では、先進国、開発途上国を問わず、世界的な経済危機に際会しての多数国間での経済協調も、一種の経済協力といってよい。先進国首脳会議で毎年議論されてきた財政金融政策、為替政策を巡っての各国間での調整や、2008年におきた「リーマン・ショック」後のG20(主要20か国・地域)による政策協調が、その例である。
[村上 敦]
出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例
経済協力
けいざいきょうりょく
economic cooperation
一般的には経済的諸関係において共通の目的と意志をもつ国家間の調整を意味するが,最近では特に発展途上国に対する先進国の経済援助をいう。第2次世界大戦後の経済協力は,アメリカを中心とするブレトンウッズ体制のもとで国際復興開発銀行 (世界銀行) ,国際通貨基金 IMF,ガット GATTなどを通じて,戦後世界経済の拡大安定と均衡を目指して行われた。その後日本やヨーロッパ諸国が戦後復興をとげ,他方多くの旧植民地諸国が政治的独立を達成すると,南北問題の進展とともに発展途上国に対する国際的な経済協力が重要性を増した。経済協力は大きく政府ベースと民間ベースに分けられる。 (1) 政府ベースの経済協力には,政府開発援助 ODAと,その他政府資金 OOFがあり,さらに ODAは2国間贈与 (無償資金供与,賠償,技術協力) ,2国間借款 (直接借款,再融資,債権繰延べ) および多国間援助 (国際機関への醵出) に分れ,OOFは輸出信用,直接投資金融,国際機関に対する融資に分れている。 (2) 民間ベースの経済協力には輸出信用,民間直接投資,国際機関に対する融資,民間非営利団体による贈与などがある。なお,経済協力に関する国際機関には,そのほか国連貿易開発会議,開発援助委員会,国際金融公社,国連食糧農業機関などがある。
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
けいざい‐きょうりょく ‥ケフリョク【経済協力】
〘名〙 国際間の経済的な協力。ふつう先進国が発展途上国に対して長期延払輸出、借款供与、技術援助などを行なうことをさす。経済援助。
出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報
けいざいきょうりょく【経済協力】
発展途上国がテイク・オフ(離陸)して自律的な成長過程に入るために,先進国がいろいろな手段(借款供与や輸入市場開放など)を通じて支援することを意味する。かつては経済援助economic aid,economic assistance,開発援助development assistanceといういい方(後者のほうが新しい)が一般的で,第2次大戦後から1950年代にかけて,〈援助aid,assistance〉といういい方が開発経済学の文献で多く使用されたが,60年代に入ってからは,援助する側と援助される側が対等であるというニュアンスをこめて,南北間の経済協力economic co‐operationまたは開発協力development co‐operationといういい方が一般的になってきている。
出典 株式会社平凡社世界大百科事典 第2版について 情報