六訂版 家庭医学大全科 「弁膜疾患」の解説
弁膜疾患
べんまくしっかん
Valvular diseases
(お年寄りの病気)
高齢者の心臓弁膜症
心臓には、4つの弁があります。右心系では右心房と右心室の間の
従来、成人の心臓弁膜症の原因としては、学童前期にかかったリウマチ熱により、のちに弁の変形を起こすリウマチ性弁膜症が一般的で、時に先天性の奇形のものがありました。
しかし近年では、栄養状態や衛生環境の改善、診断法や抗生物質を中心とした治療法の普及により、リウマチ熱や先天性奇形によるものは減少し、加齢による心臓の弁や血管内膜の動脈硬化がもたらす弁の肥厚(厚くなること)、変性、カルシウム沈着による石灰化(硬くなる)が、日本をはじめとする先進諸国の高齢者弁膜症の重要な問題となってきています。
心臓弁膜症の特徴
病気の原因によって、悪くなる弁や病態(弁の閉まりが悪く血液が逆流する
成人の先天性奇形では、大動脈弁
一方、加齢による弁や血管内膜の動脈硬化は、おもに左心系の僧帽弁の閉鎖不全症、大動脈弁の閉鎖不全症あるいは狭窄症を起こします。加齢に伴って、僧帽弁の付着部(弁輪)の石灰化もしばしばみられ、逆流や、まれに狭窄の原因になることがあります。
高齢者では、
このほかに、弁や弁下部組織が先天的にぜい弱で起こる弁逸脱症、腱索断裂による閉鎖不全症があります。
谷 正人
出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報