引渡命令(読み)ひきわたしめいれい

改訂新版 世界大百科事典 「引渡命令」の意味・わかりやすい解説

引渡命令 (ひきわたしめいれい)

強制執行において執行裁判所の行う決定をさし,次の各種がある。(1)金銭執行の際の不動産に対する強制競売に関するもので,不動産が金銭執行の引当てのため換価された際に,買受人に対する現実の占有移転を実現するために裁判所がする裁判(民事執行法83条)。債務者および不法占拠者を対象にして発せられ,債務名義としての効力を持つ。わざわざ所有権に基づく引渡請求の訴えを提起するまでもなく,より簡便かつ実効的な形で,現実の占有を買受人たる所有権者に取得させることを目的とするもので,公の換価制度の信用を担保し,金銭執行の実効性をより確実にするための制度である。(2)金銭執行が,船舶や自動車に対して行われるときの換価を実現するための,保全的な内容をもつもの(民事執行法115条1項,民事執行規則89条1項)。前者は,船舶執行の正式の申立ての前に,船舶国籍証書等の引渡しを命ずることにより,船舶執行をあらかじめ保全するものであり,後者も,強制競売の開始にあたって,執行官に自動車を保管させるために出される保全的な命令である。(3)金銭執行の際の執行対象動産が,第三者の占有下にあるときに,第三者に対して当該差押動産を執行官に引き渡すべき旨を命ずるもの(民事執行法127条)。債務者の所有に属する差押動産について,第三者が,その提出を拒むときに発せられる。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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