改訂新版 世界大百科事典 「金銭執行」の意味・わかりやすい解説
金銭執行 (きんせんしっこう)
金銭債権の強制的実現のための執行手続。民事執行の実務の大部分を占める。これに対し,有体物引渡請求権の執行や,作為・不作為の請求権の執行等は非金銭執行と総称される。金銭執行の対象は,金銭のほか,債務者の不動産,動産,債権,船舶,航空機,自動車,建設機械,無体財産権,電話加入権など広い範囲にわたるが,いずれの場合も,対象財産の差押え-換価-配当という一連の手続を追ってなされる。これは,基本債権が金銭債権であるから,対象財産を換価して得られる換価代金から弁済を受けるところに,この執行の基本目的があるからである。したがって,金銭債権に換えて,対象財産そのものの引渡しを認める執行はありえない。不動産執行(強制競売,強制管理),動産執行,債権執行,船舶執行,自動車執行などの名称も,金銭債権の引当てとなる対象による類別を意味するものであり,いずれも金銭執行の一種である。金銭執行によって得られる換価金の配当・弁済に参加しうる債権者が複数存在する場合の取扱いに関しては,日本のような平等主義,ドイツなどの優先主義,スイスなどの群団優先主義などがある。
→強制執行
執筆者:清田 明夫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報