家庭医学館 「微量元素欠乏症」の解説
びりょうげんそけつぼうしょう【微量元素欠乏症】
このような元素は、食物からとるほかなく、欠かせないものなので、必須微量元素(ひっすびりょうげんそ)と呼んでいます。
必須微量元素には、亜鉛(あえん)、銅、クロム、ヨード、コバルト、セレン、マンガン、モリブデンなどがありますが、これらが欠乏した状態が微量元素欠乏症です。これらの元素のうち、亜鉛と銅の欠乏症がよく知られています。
ふつうの食生活をしているかぎり、微量元素欠乏症になることはありません。
最近よく行なわれている、点滴だけの栄養補給(高カロリー輸液)を長期間続けた場合におこります。
脳卒中(のうそっちゅう)の後遺症などで、食べることができず、栄養食だけで栄養をとっている場合にもおこることがあります。
亜鉛欠乏症の症状は、高カロリー輸液時にしばしばみられ、顔や股部(こぶ)に水疱(すいほう)や化膿(かのう)をともなう発疹(ほっしん)ができ、しだいに全身に広がっていきます。また、脱毛(だつもう)や爪(つめ)の変化、さらに口内炎(こうないえん)や腹痛、吐(は)き気(け)、下痢(げり)などの腹部症状も現われます。
銅欠乏症の症状は、高カロリー輸液を始めてから数か月後にみられ、白血球(はっけっきゅう)の減少、貧血(ひんけつ)、骨の変形(小児の場合)などが現われます。
セレン欠乏症の症状は、1年以上にわたり高カロリー輸液を行なうとみられます。不整脈(ふせいみゃく)や心不全(しんふぜん)がおこる場合と、脚(あし)に筋肉痛がおこる場合とがあります。
●検査
血液中の微量元素の測定を行ないます。
●治療
高カロリー輸液用の微量元素剤が使用されます。これを輸液に入れ、点滴で補給します。