心臓破裂ともいう。心臓の壁に亀裂が起こり,血液が流出する状態をいう。心破裂が起こると心囊に血液が充満し(このような状態を心タンポナーデという),心室が拡張できなくなり,心拍出量は減少し,血圧も低下して,生命を維持できなくなる。治療は一般に困難である。正常の心筋が破裂するのは,血圧すなわち心室圧が400mmHg以上になったときであるが,通常はどんなに血圧が上昇しても300mmHgに達することはほとんどないと考えられている。したがって,正常の状態では心破裂を起こすことはない。心破裂の原因となるのは,大部分が心筋梗塞(こうそく)である。心筋梗塞で血圧が高い場合や老人,とくに女性の場合に生じやすく,心筋梗塞の発生後数日の間,あるいは10日前後に,再び強い狭心発作が起こったり,興奮したりすると,心筋に少しずつ亀裂が生じて,ついには全層が破れる。心破裂は死亡率が高いが,破裂後数時間を切りぬけると,心膜の癒着によって心タンポナーデを逃れ,仮性心室瘤とよばれる状態となる。心破裂と同様の病態のものに心室中隔の穿孔(せんこう)があるが,心破裂と同様に,中隔梗塞のあと,左心室から右心室へ向かって亀裂が生じるもので,この場合は心不全が生じる。最近,心筋梗塞の再灌流療法が成功するにつれ,心破裂は少なくなった。
→心筋梗塞
執筆者:細田 瑳一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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