( 1 )上代は「おもほゆ」であったが、中古には「おぼゆ」の形でも用いられるようになる。ただし、中古初期には「おもほゆ」の使用例が主に和歌に認められるところから、「おぼゆ」に対して歌語「おもほゆ」という分化があったともみられる。しかし、「源氏物語」では、「おもほゆ」は和歌よりも地の文の方に多く用いられているので、この語を歌語と断定するわけにもいかない。
( 2 )中古後期には「おもほゆ」はまれにしか用いられなくなり、次第に古語として意識されるようになったものと思われる。中世以降は私家集に散見されるが、雅語として用いられたものであろう。