家庭医学館 「急性副睾丸炎」の解説
きゅうせいふくこうがんえんきゅうせいせいそうじょうたいえん【急性副睾丸炎(急性精巣上体炎) Acute Epididymitis】
睾丸に付属する小さな器官である副睾丸に、急性の炎症がおこる病気で、陰嚢(いんのう)が腫(は)れて痛みがあり、高熱が出ます。大腸菌(だいちょうきん)、変形菌、緑膿菌(りょくのうきん)、ブドウ球菌(きゅうきん)などが尿道(にょうどう)から入って、前立腺(ぜんりつせん)、精嚢(せいのう)、精管(せいかん)を通って副睾丸に感染しておこることが多いのですが、クラミジア、淋菌(りんきん)が感染しておこる場合もあります。クラミジア、淋菌は性行為によって感染するので、性感染症(STD(「性感染症(STD)とは」))と呼ばれています。
たいてい片側の副睾丸におこりますが、両側におこると男子不妊症の原因になることがあるので要注意です。
早く適切な治療をすれば苦痛が少なくてすみ、短期で治すことができます。
[症状]
感染している側の陰嚢部の痛み、腫れ、しこりが特徴ですが、悪寒(おかん)と38~40℃の発熱もあります。ひどくなると陰嚢の皮膚は赤く腫れあがって、熱をもった感じもします。副睾丸と睾丸はひとかたまりとなり、こぶし大以上に腫大し、歩行が不自由になることもあります。
[原因]
尿道炎(にょうどうえん)、前立腺炎(ぜんりつせんえん)、膀胱炎(ぼうこうえん)、精嚢炎(せいのうえん)などをおこした菌が副睾丸に感染したものが多いのですが、尿道カテーテルの挿入などでおこることもあります。
[検査と診断]
発熱などと、陰嚢の腫れ、痛みから診断されることが多いのですが、発熱が軽い場合、同じような陰嚢の腫れと痛みがある睾丸捻転症(こうがんねんてんしょう)、睾丸垂捻転症(こうがんすいねんてんしょう)、副睾丸垂捻転症(ふくこうがんすいねんてんしょう)と区別できないことがあります。この場合は、手術をして診断をつけます。
[治療]
細菌の感染なので、まず原因となっている細菌に効く抗生物質を用い、症状に応じた治療を行ないます。朝は微熱でも夕方には高熱になるので、症状によっては入院して治療を行ないます。
陰嚢部の冷湿布(れいしっぷ)(アイスノンなどをタオルでくるんで当てる)によって痛みはだいぶ楽になります。
熱は5~6日でとれますが、副睾丸のしこりがとれるには2~3か月かかることもあります。治療は2週間くらいですみますが、しこりがとれるまでむりはしないほうがよいでしょう。