急性喉頭炎(読み)きゅうせいこうとうえん(その他表記)Acute Laryngitis

六訂版 家庭医学大全科 「急性喉頭炎」の解説

急性喉頭炎
きゅうせいこうとうえん
Acute laryngitis
(のどの病気)

どんな病気か

 喉頭とは、空気の通り道である気道の一部で、首の真ん中にある器官です。その一部がのど仏として触れます。喉頭は声帯を振動させて声を出す発声機能と、食べ物を飲み込む時にむせないようにする嚥下(えんげ)機能をもっています。

 急性喉頭炎とは、喉頭の粘膜に起こる急性の炎症です。かぜの部分症状として現れることもありますが、鼻炎、副鼻腔炎(ふくびくうえん)扁桃炎(へんとうえん)咽頭炎(いんとうえん)などを合併することもあります。

原因は何か

 パラインフルエンザウイルスアデノウイルス、インフルエンザウイルス、RSウイルスなどの感染や、A群溶血性連鎖球菌(ようけつせいれんさきゅうきん)、肺炎球菌、ブドウ球菌、インフルエンザ球菌などの感染が多くみられます。感染以外の原因としては、声の酷使、たばこの煙の吸入などがあります。

症状の現れ方

 声がれ(嗄声(させい))、乾いた(せき)、のどの乾燥感、異物感などが急性喉頭炎の症状です。鼻炎、副鼻腔炎を合併した場合は鼻汁や頭痛、扁桃炎咽頭炎が合併した場合はのどの痛みや発熱などの症状を伴います。またこれらの症状に続いて、急性喉頭炎の症状が出てくることもあります。

検査と診断

 間接喉頭鏡検査や喉頭ファイバースコープ検査で喉頭を観察することで、容易に診断できます。喉頭の粘膜が発赤し、声帯も赤くはれている像がみられます。

治療の方法

 消炎薬や鎮咳薬(ちんがいやく)投与されますが、細菌感染が疑われる場合は抗生剤の投与が有効です。多くの場合、数日から数週で治ります。抗生剤やステロイドホルモンなどをネブライザー吸入する治療も行われます。声がれを伴う場合は、発声を制限すると声の改善に有効です。

病気に気づいたらどうする

 安静にして声をなるべく出さないようにします。たばこやお酒も慎みます。軽いものであれば、かぜが治るように自然に治りますが、症状が重い時や、2週間以上の長期にわたるようであれば、耳鼻咽喉科を受診してください。

塩谷 彰浩


急性喉頭炎
きゅうせいこうとうえん
Acute laryngitis
(感染症)

どんな感染症か

 感冒(かんぼう)かぜ症候群)にかかった時に、声を出す喉頭部分がとくに強い炎症を起こした状態をいいます。

 ウイルスに感染して起こる場合が多く、さらにインフルエンザ菌、肺炎球菌(はいえんきゅうきん)溶血連鎖球菌(ようけつれんさきゅうきん)、ブドウ球菌などの細菌との混合感染を起こすこともあります。刺激性のガスや煙、ちりやほこりの吸入、たばこの吸いすぎ、気候の急変、鼻かぜやのどの炎症が誘因となり、冬に多くみられます。猩紅熱(しょうこうねつ)麻疹(ましん)百日咳(ひゃくにちぜき)などの感染症に合併することもあります。

症状の現れ方

 鼻水やのどの痛みなどのかぜ症状に引き続いて、または前触れなく突然、声がれ、発作性の咳、痰が出るようになり、時に軽度の発熱や嚥下痛(えんげつう)(食べ物を飲み込む時の痛み)を伴うこともあります。選挙運動やスポーツの応援など過激な声の酷使から発症することもあります。

検査と診断

 耳鼻咽喉科でのファイバースコープ(軟性内視鏡)などを使ったのどの検査で、粘膜の発赤や腫脹(しゅちょう)(はれ)をみることで診断できます。

治療の方法

 声がれがひどい場合、数日間声をいっさい出さない沈黙療法が必要になります。薬物治療が主で、抗菌薬や消炎薬を内服します。また、吸入器またはネブライザーから喉頭へ局所的に抗菌薬、ステロイド薬、血管収縮薬(腫脹を軽減)の噴霧(ふんむ)投与を行います。

病気に気づいたらどうする

 声の安静(発声しないこと)と、のどが乾燥しないように加湿することが大切です。たばこはいっさい避け、水分補給と室内の湿度の維持、十分な睡眠と栄養補給、疲労回復に努めます。早めに耳鼻咽喉科医の診察を受けてください。

関連項目

 急性喉頭炎

余田 敬子

出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報

家庭医学館 「急性喉頭炎」の解説

きゅうせいこうとうえん【急性喉頭炎 Acute Laryngitis】

[どんな病気か]
 喉頭に生じた急性炎症ですが、喉頭だけに炎症がおこることはまれで、ほとんどが急性上気道炎(きゅうせいじょうきどうえん)(いわゆる「かぜ」(「かぜ症候群(普通感冒)」))に合併しておこるために、急性鼻炎(びえん)や急性咽頭炎(いんとうえん)もともなっています。また、急性気管支炎も併発することがあります。このような急性上気道炎の部分症状として生じるものは、急性単純性喉頭炎(きゅうせいたんじゅんせいこうとうえん)(急性(きゅうせい)カタル性喉頭炎(せいこうとうえん))と呼ばれます。
 また、喉頭のなかでも声帯(せいたい)の炎症が強い場合は、急性声帯炎(きゅうせいせいたいえん)と呼ばれることがあります。
[症状]
 急性上気道炎の諸症状(発熱や鼻汁(びじゅう)、のどの痛みなど)に加えて、声帯の炎症による嗄声(させい)(声がかれる)がおこります。
 声帯粘膜(せいたいねんまく)の炎症が強く、急性の浮腫(ふしゅ)状態になると、失声(しっせい)(声が出ない)に近い嗄声がおこることもあります。
 声帯の炎症が軽度で、その他の喉頭粘膜の炎症が強いときには、嚥下痛(えんげつう)(飲み込むときののどの痛み)や咽喉頭異常感(いんこうとういじょうかん)(「咽喉頭異常感症」)が主体になります。
[検査と診断]
 間接喉頭鏡や喉頭内視鏡で観察すると、声帯粘膜やほかの喉頭粘膜の発赤(ほっせき)、血管の充血がみられることで診断できます。
[原因]
 急性上気道炎をおこすウイルスの感染が原因ですが、二次的に細菌感染もおこしていることがあります。また、喫煙者は慢性喉頭炎(「慢性喉頭炎」)をおこしていることがあり、これが急性増悪をおこすと、急性喉頭炎と同じ症状が現われます。急性炎症がおこっているときに飲酒をすると、炎症がさらにひどくなります。
[治療]
 急性上気道炎に対する対症療法が中心です。
 のどの痛みや発熱に対しては解熱性鎮痛薬、鼻汁に対しては抗ヒスタミン薬、細菌感染が疑われる場合には抗生物質や抗菌薬を内服で使用します。また、抗生物質や副腎皮質(ふくじんひしつ)ホルモン薬をネブライザー(コラム「ネブライザー療法(霧滴吸入療法)」)でのどに噴霧します。喫煙・飲酒はひかえます。

出典 小学館家庭医学館について 情報

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