悲さ・哀さ・愛さ(読み)かなしさ

精選版 日本国語大辞典 「悲さ・哀さ・愛さ」の意味・読み・例文・類語

かなし‐さ【悲さ・哀さ・愛さ】

〘名〙 (形容詞「かなしい」の語幹接尾語「さ」の付いたもの)
① 悲しいこと。また、その度合。
万葉(8C後)四・五五六「筑紫船いまだも来ねばあらかじめ荒ぶる君を見るが悲左(かなしサ)
源氏(1001‐14頃)夕顔「『いかにせん』と思しわづらへど、なほかなしさのやるかたなく〈略〉とおぼし念じて」
※若菜集(1897)〈島崎藤村草枕「ああ孤独(ひとりみ)の悲痛(カナシサ)を 味ひ知れる人ならで」
② (愛) 可愛いこと。いとしいこと。大切で惜しまれること。また、その度合。
※万葉(8C後)一四・三四六二「あしひきの山さは人の人さはにまなといふ子があやに可奈思佐(カナシサ)
※源氏(1001‐14頃)乙女「をとこ君の御かなしさは、すぐれ給ふにやあらん」
③ 貧しいこと。また、その度合。
※浮世草子・日本永代蔵(1688)二「爰(ここ)を立退、東(あづま)のかたへ行道の草鞋(わらんぢ)とてもなく、かなしさは我身ひとりとなげくに甲斐(かひ)もなし」
④ 努力してもどうにもならない、本質的なことによる限界を感じる悲しみ。動かしがたい運命によるあわれさ。
蓼喰ふ虫(1928‐29)〈谷崎潤一郎一二外国人の悲しさにはその発音に何処か東北訛りのやうなひびきがあって」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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