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愛国心 あいこくしん

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

愛国心
あいこくしん

自己の属する政治的共同体 (国家) と自己とを一体のものと感じるところに生じる共同体への愛着感。政治的反省を経ない素朴な帰属感としての愛国心は,しばしば排外主義的国家主義に統合されやすい。しかし近代的意味における愛国心 (パトリオティズム) は,国民国家を専制君主や外敵から奪回し,自由な市民の共同体として形成,維持すること,またそのような共同体に奉仕することを内容とするものであって,国家への非合理な盲目的服従を意味するものではない。

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デジタル大辞泉の解説

あいこく‐しん【愛国心】

自分の国を愛し、国の名誉・存続などのために行動しようとする心。祖国愛

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世界大百科事典 第2版の解説

あいこくしん【愛国心 patriotism】

愛国心とは,人が自分の帰属する親密な共同体,地域,社会に対して抱く愛着や忠誠の意識と行動である。愛国心が向かう対象は,国countryによって総称されることが多いが,地域の小集団から民族集団が住む国全体までの広がりがある。この対象が何であれ,それはつねにそこに生活する人々,土地,生活様式を含む生活世界の全体である。また愛国心の現れ方は,なつかしさ,親近感,郷愁のような淡い感情から,対象との強い一体感あるいは熱狂的な献身にいたるまで,幅がある。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

愛国心
あいこくしん
patriotism

ある一つの国家に属する国民が、その国家に愛着心をもち、国家の運命を自分の運命と同一視し、国家に一身を捧(ささ)げてもよいと考えるような感情をさす。こうした感情は、人間が集団生活をしているところでは自然に発生しやすいともいえる。アメリカの社会学者W・G・サムナーは、それをエスノセントリズムethnocentrismと名づけた。すなわち、外集団に対する敵対感と裏腹に存在している、内集団に対する連帯感や理想化である。しかし、現在問題となっている愛国心は、近代国民国家形成以後のそれであって、未開社会のエスノセントリズムや、古代ギリシアのポリス(都市国家)やローマや古代中国などの専制的帝国などにみられる「愛国心」とは区別して考えるべきである。[日高六郎]

近代の愛国心

ヨーロッパにおいて、封建制社会の枠組みが崩れ、中央集権的な絶対主義国家が生まれてくる。それは、経済的には商品流通の広がりとしての国民的市場圏の成立と密接な関係がある。こうして、イギリス、オランダ、フランスなどにおいて新しい近代国家の誕生がみられる。しかし、この段階では、国民の忠誠の対象は国家ではなく、むしろ国王であった。
 やがて、都市の市民階級の力がさらに強くなって、王侯、貴族、僧侶(そうりょ)などの権力からの解放が求められる。そして、フランス大革命(1789)でみられるように、自由、平等、博愛の市民的、民主的価値の実現のために、新しい国家権力の形成が問題となる。この段階で、典型的な意味での近代国民国家が成立する。そして、市民にはこの国家の支持と防衛の義務が課せられ、そのなかで近代的な愛国心が生まれた。そこでは、愛国と市民的自由とが結び付いていた。つまり、ナショナリズムとデモクラシーとは一体のものとされた。
 こうした愛国心は、たとえば江戸幕藩体制における藩主への忠誠心などとはかなり違ったものである。そのことを自覚して、明治時代の学者西村茂樹は『尊王愛国論』(1891)のなかで、「現今本邦にて用ひる愛国の義は支那(しな)より出(いで)たるに非(あら)ずして、西洋諸国に言ふ所のパトリオチズムを訳したるものなり……本邦及び支那の古典を閲するに、西人の称するが如(ごと)き愛国の義なく……」と書いている。この指摘は歴史的に正確であるといえよう。
 18世紀のヨーロッパでは、フランスやオランダの進歩派や共和派は自らを愛国者と名のり、イタリアの統一独立国家を求める運動に参加する者たちも愛国者であることを誇りとした。こうした思想的系譜は、日本でも自由民権論者が愛国公党とか愛国社を創設したところにみられる。[日高六郎]

帝国主義国家における愛国心

しかし、近代国民国家の愛国心は、同時に植民地獲得競争のなかで、比較的、民主主義の発達したイギリス、アメリカ、フランスなどにおいても、侵略主義を肯定する愛国心に変質した。まして前近代的要素が濃厚に残っていたドイツ、ロシア、日本などでは、君主への忠誠と国家への献身が癒着する。日本では、「愛国」は自由民権論者から国権論者の手に渡った。明治の絶対主義国家のなかでは、「忠君愛国」が国民の教化の中核に据えられる。こうして愛国心は市民的自由と切り離された。その考えは1890年(明治23)に発布された教育勅語で完成された。光と影を伴っていた愛国心の影の部分がむしろ大きくなり、まさに「無頼漢の最後の逃げ場所」と指摘されるようなものとなった。
 その側面は第二次世界大戦を経た現在でさえ強く残っている。たとえば、1982年のフォークランド諸島(マルビナス諸島)をめぐるイギリスとアルゼンチンの戦いは、19世紀的「愛国心」がいまも存在していることを示した。愛国心はどこの国でも「国を守る気概」というように、国家の軍事的「防衛」と結び付けられていることが多い。日本における戦後の「愛国心」論争はその例証である。[日高六郎]

植民地解放闘争における愛国心

しかし他方、長い間植民地圧制に苦しんできた被圧迫民衆のなかからは、国家の独立を求める愛国心が生まれる。毛沢東は「民族は解放を求め、国家は独立を求め、人民は革命を求める」といったが、こうした文脈のなかでの愛国心は、現在第三世界の解放運動のなかに存在している。ただし、第二次大戦後多くの社会主義国家が生まれたが、その間でも国家の利害の衝突が生まれた。このことでも理解できるとおり、ナショナリズムとインターナショナリズムとの統一は、依然としてまだ解決されていない課題である。
 一般的に、愛国心を国家がとくに奨励することは、むしろ有害な時代に入っている。ましてや軍事的緊張のもとでつくられる愛国心は、人類の平和にとっての対立物となっているといえよう。[日高六郎]
『青柳清孝・園田恭一・山本英治訳『現代社会学大系3 サムナー フォークウェイズ』(1975・青木書店) ▽丸山真男著『増補版 現代政治の思想と行動』(1964・未来社) ▽E・H・カー著、大窪愿二訳『ナショナリズムの発展』(1952・みすず書房)』

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