民族国家(読み)ミンゾクコッカ(その他表記)nation-state

デジタル大辞泉 「民族国家」の意味・読み・例文・類語

みんぞく‐こっか〔‐コクカ〕【民族国家】

歴史的、文化的に形成された、民族基盤としてつくられた近代国家国民国家

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精選版 日本国語大辞典 「民族国家」の意味・読み・例文・類語

みんぞく‐こっか‥コクカ【民族国家】

  1. 〘 名詞 〙 資本主義発達に伴い、市民階級経済力が強まって、封建領主や他民族の支配が打破され樹立された、民族として統一された近代国家
    1. [初出の実例]「よく新しい民族国家の観念への切替えに成功したればこそ」(出典:怒りの花束(1948)〈中野好夫〉)

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「民族国家」の意味・わかりやすい解説

民族国家
みんぞくこっか
nation-state

民族共同体を基盤にして形成された近代国家。歴史的には,中世普遍主義に対抗するものとして出現した。資本主義の発達に伴い,閉鎖的な自給自足経済に基づく中世封建社会の内部から次第に経済活動の自由と,一層広範囲な市場圏を求める動きが起り,この動きが絶対君主による国家統一を促し,血縁宗教,言語,伝統などの紐帯によって結ばれた民族共同体の結束を強化した。このように近代民族国家は初め君主主権のもとに形成されたが,ブルジョア革命はこれを否定し,代って国民主権原理確立した。ヨーロッパにおいては,17~19世紀にこういった民族主義運動が高揚し,次々に民族国家が形成された。この民族主義運動は第1次世界大戦前後からアジア,アフリカ地域をも巻込み,第2次世界大戦後各地で一斉に反植民地主義の独立運動が起った。しかし,これら諸国はヨーロッパ的な意味での近代国家というには未成熟の段階であるため,その内部にかかえる問題は大きい。また,当初民族国家の外被をまとう形で出現した政治的単位も厳密な意味で単一民族を主体としたものではなく,多くは複合的な民族構成を特徴としてきた。その意味で,近代国際社会の成立以来その基本的な構成単位となってきた主権国家は,民族国家というよりは国民国家としての相貌をより鮮明に浮き上らせてきたといえよう。 20世紀に入ってから,それぞれの国民国家内部で民族構成の複合性のゆえに紛争が多発している。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「民族国家」の意味・わかりやすい解説

民族国家
みんぞくこっか
national state

民族を基盤として成立した近代国家。資本主義が成長し始めると、統一された市場の存在が必要となり、政治的には、絶対君主のもとでの国家統一が行われた。しかし、こうして成立した絶対主義国家ではまだ民族的統一が不十分であり、資本主義の発展に伴って民族的統一が確立し、民族国家が成立する。複数の民族を基盤にして国家が成立する場合も多く、これを多民族国家といい、そのなかでの支配的民族と被支配民族の対立が民族問題として登場した。一方、植民地として支配されたアジア・アフリカでは民族国家の成立が暴力的に妨げられていたが、第二次世界大戦のあと次々に政治的独立を達成した。しかし、ここで成立した国家は、植民地時代に人為的に引かれた境界をそのまま国境とするなど、植民地時代の遺産によって不合理な要素を含んでおり、人民の自決権の確立、民族国家の形成がまだ課題として残されている。

[土生長穂]

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世界大百科事典(旧版)内の民族国家の言及

【近代社会】より

…そしてこの近代的発展と歩みを共にすることができない民族は〈歴史なき民族〉(エンゲルス)といわれるのである。 近代社会が西ヨーロッパ市民社会に古典的範例を求めながら資本制的発展のうえに成立するとすれば,それはまた,少なくとも歴史の過渡的歩みのなかでは,統一的な国内市場や統合された国民経済を背景にもつことになるだろうし,統一言語や国民文学を創り出し,国民的基盤での軍隊を生み,そして政治的には国民国家(民族国家ともいう)を一つの枠組みとしてもつことになろう。エンゲルスは1884年に書かれた手稿のなかで,中世初期における諸部族Volkの混合のなかからしだいに新しい民族体Nationalitätが発展してきたこと,また言語群の境界がひとたび画されるようになると,民族体が近代化し,やがて民族Nationに発展することを指摘した。…

【国民国家】より

…共通の社会・経済・政治生活を営み,共通の言語・文化・伝統をもつ,歴史的に形成された共同体を基礎として成立した国家を一般に指す。この意味で民族国家とほぼ同意に用いられる。また,多元的分裂状態を克服して成立した統一的な絶対主義国家を含めて国民国家という場合もあるが,絶対君主に集中されていた権力・主権を,市民革命によって奪取した結果形成された国家を指し,その意味で近代国家といわれる。…

【国家】より

…しかし,前記の被保護国,従属国の場合のように,主権は必ずしも固有のものでなく,制限されることがあることに注意する必要がある。【松田 幹夫】
【現代の国際社会と民族国家】
 国際政治の基本的な行為主体actorとして,国家は,戦争から平和にいたるさまざまな国際現象の担い手の役割を果たしてきている。国家は,ふつう,民族国家nation stateと呼ばれる。…

【世界政治】より

…ヨーロッパ内の価値体系では許容されない商品としての奴隷の交易,また奴隷調達のためのアフリカでの武力行使は,その一例である。 これと関連して第2に,古典的主権国家体系の形成・定着の時代は,通例〈民族国家〉成立の時代と呼ばれるが,これは高度にヨーロッパ人の自己イメージの反映にほかならなかった。当時代表的な〈民族国家〉と呼ばれたイギリス,フランス,オランダ,ドイツ等は,いずれも植民地帝国であった。…

※「民族国家」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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