出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
民族を基盤として成立した近代国家。資本主義が成長し始めると、統一された市場の存在が必要となり、政治的には、絶対君主のもとでの国家統一が行われた。しかし、こうして成立した絶対主義国家ではまだ民族的統一が不十分であり、資本主義の発展に伴って民族的統一が確立し、民族国家が成立する。複数の民族を基盤にして国家が成立する場合も多く、これを多民族国家といい、そのなかでの支配的民族と被支配民族の対立が民族問題として登場した。一方、植民地として支配されたアジア・アフリカでは民族国家の成立が暴力的に妨げられていたが、第二次世界大戦のあと次々に政治的独立を達成した。しかし、ここで成立した国家は、植民地時代に人為的に引かれた境界をそのまま国境とするなど、植民地時代の遺産によって不合理な要素を含んでおり、人民の自決権の確立、民族国家の形成がまだ課題として残されている。
[土生長穂]
…そしてこの近代的発展と歩みを共にすることができない民族は〈歴史なき民族〉(エンゲルス)といわれるのである。 近代社会が西ヨーロッパ市民社会に古典的範例を求めながら資本制的発展のうえに成立するとすれば,それはまた,少なくとも歴史の過渡的歩みのなかでは,統一的な国内市場や統合された国民経済を背景にもつことになるだろうし,統一言語や国民文学を創り出し,国民的基盤での軍隊を生み,そして政治的には国民国家(民族国家ともいう)を一つの枠組みとしてもつことになろう。エンゲルスは1884年に書かれた手稿のなかで,中世初期における諸部族Volkの混合のなかからしだいに新しい民族体Nationalitätが発展してきたこと,また言語群の境界がひとたび画されるようになると,民族体が近代化し,やがて民族Nationに発展することを指摘した。…
…共通の社会・経済・政治生活を営み,共通の言語・文化・伝統をもつ,歴史的に形成された共同体を基礎として成立した国家を一般に指す。この意味で民族国家とほぼ同意に用いられる。また,多元的分裂状態を克服して成立した統一的な絶対主義国家を含めて国民国家という場合もあるが,絶対君主に集中されていた権力・主権を,市民革命によって奪取した結果形成された国家を指し,その意味で近代国家といわれる。…
…しかし,前記の被保護国,従属国の場合のように,主権は必ずしも固有のものでなく,制限されることがあることに注意する必要がある。【松田 幹夫】
【現代の国際社会と民族国家】
国際政治の基本的な行為主体actorとして,国家は,戦争から平和にいたるさまざまな国際現象の担い手の役割を果たしてきている。国家は,ふつう,民族国家nation stateと呼ばれる。…
…ヨーロッパ内の価値体系では許容されない商品としての奴隷の交易,また奴隷調達のためのアフリカでの武力行使は,その一例である。 これと関連して第2に,古典的主権国家体系の形成・定着の時代は,通例〈民族国家〉成立の時代と呼ばれるが,これは高度にヨーロッパ人の自己イメージの反映にほかならなかった。当時代表的な〈民族国家〉と呼ばれたイギリス,フランス,オランダ,ドイツ等は,いずれも植民地帝国であった。…
※「民族国家」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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