慢性膀胱炎(読み)まんせいぼうこうえん(英語表記)Chronic cystitis

六訂版 家庭医学大全科 「慢性膀胱炎」の解説

慢性膀胱炎
まんせいぼうこうえん
Chronic cystitis
(腎臓と尿路の病気)

どんな病気か・原因は何か

 慢性膀胱炎膀胱炎症が持続しているもので、急性膀胱炎と同じようにほとんどが細菌の感染によって起こります。

 原因菌としては、大腸菌以外の緑膿菌(りょくのうきん)腸球菌(ちょうきゅうきん)、ブドウ球菌などの割合が急性膀胱炎よりも高く、複数の細菌が感染していることもあります。また、結核菌によるものもあります。

 尿の流れが悪くなったり、感染が持続したりするような状態、たとえば前立腺肥大症(ぜんりつせんひだいしょう)前立腺がん膀胱結石(ぼうこうけっせき)膀胱腫瘍、尿道の狭窄(きょうさく)神経因性膀胱(しんけいいんせいぼうこう)膀胱異物、尿道カテーテル留置などがある場合にはとくに起こりやすくなります。

 感染性以外の原因としては、がんに対する放射線治療後に起こる放射線性膀胱炎や、原因が不明な間質性(かんしつせい)膀胱炎(コラム)という病気があります。

症状の現れ方

 下腹部の不快感、頻尿(ひんにょう)、排尿痛、尿意切迫感、残尿感、下腹部痛、血尿、尿失禁など急性膀胱炎と同様の症状があり、それが持続したり繰り返したりします。一方、排尿後に何となくすっきりしないといった違和感や、尿の混濁があったりするだけで、ほとんど症状がないことも少なくありません。

検査と診断

 急性膀胱炎と同様に、症状と尿検査が大切で、通常、血液検査では異常は認めません。

 しかし、前述のような病気が慢性膀胱炎の原因となっている可能性があるので、超音波検査、排泄性尿路造影、CT、膀胱鏡検査などの検査も必要に応じて行われます。また、細菌培養を行って原因菌を調べることは、適切な治療を行ううえで大変重要です。

治療の方法

 細菌感染に対しては、抗菌薬を主に内服しますが、その原因となる病気が存在する場合には治りにくいことがあります。

 薬が効きにくい場合、何度も繰り返す場合、血尿や発熱などを伴う場合などは原因となる病気がないかを検査し、原因が見つかった場合は、それに対する治療を考慮する必要があります。

病気に気づいたらどうする

 慢性膀胱炎では前述のように症状がはっきりしないこともありますが、尿検査で尿路感染症所見が認められることがあるので、尿の検査を受けるようにしましょう。

 また、膀胱炎の症状が長く続く時や繰り返す時、血尿が続く時、発熱を伴う時などには原因となる病気が隠れている場合があります。このような時には泌尿器科専門医に相談し、適切な検査を受けてください。

西野 友哉, 古巣 朗, 河野 茂

出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報

家庭医学館 「慢性膀胱炎」の解説

まんせいぼうこうえん【慢性膀胱炎】

[どんな病気か]
 尿路になんらかの別の病気があって膀胱炎が続く状態で、あまり症状がありません。尿路の病気すべてが原因となります。
[症状]
 慢性膀胱炎の症状は、ふだんは下腹部の不快感くらいですが、急に炎症が強くなると、急性膀胱炎と同じような症状が出ることもあります。膀胱炎がひどいと尿が濁ります。また、膀胱炎をおこしている病気の症状だけが現われることもあります。
[検査と診断]
 検査で持続的に細菌尿(さいきんにょう)と膿尿(のうにょう)がみられたら、慢性膀胱炎と診断されます。しかし、膀胱炎の原因になっている病気の診断がたいせつです。
 問診・診察、排泄性腎盂造影(はいせつせいじんうぞうえい)・膀胱造影・尿道造影などのX線検査、あるいは膀胱鏡検査などによって、原因となっている病気をさがします。
 膀胱炎をおこしている細菌も多様なので、尿中の細菌を培養して原因菌を決定することも重要です。
[治療]
 尿中の細菌の培養で原因菌がわかったら、その細菌に対して効果の強い抗菌薬を服用します。原因となっている病気を治療しないと再発するので、その病気の治療がたいせつです。
■結核性膀胱炎(けっかくせいぼうこうえん)
 通常は、肺結核の病巣から結核菌が血管を通じて腎臓に感染し、尿の流れに沿って、尿管、膀胱へと感染してくる病気です。
 慢性膀胱炎の症状がみられますが、尿中の菌を培養すると、ふつう膀胱炎をおこす細菌ではなく、結核菌があることから診断がつきます。現在でも、ときどきみられる病気です。
■放射線膀胱炎(ほうしゃせんぼうこうえん)
 下腹部に放射線治療を受けた場合におこることがある膀胱炎で、放射線を受けてから10年以上過ぎて発症することもあります。
■間質性膀胱炎(かんしつせいぼうこうえん)
 原因がはっきりしない膀胱炎で、アレルギーがかかわっていると考えられていますが、治りにくい病気です。

出典 小学館家庭医学館について 情報

今日のキーワード

脂質異常症治療薬

血液中の脂質(トリグリセリド、コレステロールなど)濃度が基準値の範囲内にない状態(脂質異常症)に対し用いられる薬剤。スタチン(HMG-CoA還元酵素阻害薬)、PCSK9阻害薬、MTP阻害薬、レジン(陰...

脂質異常症治療薬の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android