日本大百科全書(ニッポニカ) 「所在不明児」の意味・わかりやすい解説
所在不明児
しょざいふめいじ
住民基本台帳に記録があるが、乳幼児健康診査や予防接種等の受診、福祉サービス、義務教育などの記録がなく、連絡や接触が図れないため自治体が安否を把握できない子供。所在不明児童、居所不明児、所在不明の子ともよばれる。このような子供がいる家庭ではネグレクトや暴行などの虐待が行われている可能性もあり、子供の命が危ぶまれるケースも想定されるが、年齢や就学の実態、事件性の有無などにより行政の管轄が異なるため、これまで積極的な所在確認や捜索、保護などの活動は行われてこなかった。
しかし、2010年(平成22)ごろから所在不明とされていた児童の死亡事件などが全国で相次いだことから実態の把握や対策を求める世論が高まり、子供を虐待から守るための法整備を求める市民運動も広がった。これをきっかけに2014年、厚生労働省が「居住実態が把握できない児童」に関する調査を行った。調査の対象は、2014年5月1日時点で自治体に住民票があるが、調査時点で乳幼児健康診査等の保険や福祉サービスに関する電話や家庭訪問等による連絡が取れず、居住実態の確認が必要と判断された家庭の児童で、当該自治体が調査を行い、厚生労働省が結果を集計。調査時点で居所実態が把握できない児童の数は全国で約2900人にのぼった。当該児童については各自治体により所在確認が続けられ、同年10月20日時点で不明の児童は141人となった。同年8月には、政府全体でこの問題を含めた児童虐待防止に取り組むための「児童虐待防止対策に関する副大臣等会議」が設置された。
[編集部]