打ち出づ(読み)ウチイズ

デジタル大辞泉 「打ち出づ」の意味・読み・例文・類語

うち‐い・ず〔‐いづ〕【打ち出づ】

[動ダ下二]
広々とした所に出る。
田子たごの浦ゆ―・でて見ればま白にそ富士の高嶺に雪は降りける」〈・三一八〉
さっと出る。
「谷風にとくる氷のひまごとに―・づる波や春の初花」〈古今・春上〉
出発する。出陣する。
「平太入道定次を大将として、…近江国へ―・でたりければ」〈平家・一〇〉
人前に押し出る。
「誰ともなく、あまたの中に―・でて」〈徒然・五六〉

㋐たたいて音や火などを出す。
拍子―・でて、忍びやかにうたふ声」〈篝火
㋑外に出す。特に、出衣いだしぎぬをする。
葡萄染えびぞめの二重文の唐衣など―・でたり」〈栄花・根合〉
㋒口に出して言う。
「いかでこの男に物言はむと思ひけり。―・でむこと難くやありけむ」〈伊勢・四五〉
㋓声をあげて唱える。
「その寺の仏の御経をいとあらあらしう、たふとく―・でみたるにぞ」〈・一二〇〉

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「打ち出づ」の意味・読み・例文・類語

うち‐い・ず‥いづ【打出】

  1. [ 1 ] 〘 自動詞 ダ下二段活用 〙 ( 「うち」は接頭語 )
    1. 物かげなどからひょいと出る。うちず。
      1. (イ) 見通しのきく所へ出る。
        1. [初出の実例]「田児の浦ゆ打出(うちいで)て見れば真白にそ不尽(ふじ)の高嶺に雪は降りける」(出典万葉集(8C後)三・三一八)
      2. (ロ) 姿を現わす。現われる。
        1. [初出の実例]「うちいでてずんじ給ふこゑ、いとおもしろし」(出典:宇津保物語(970‐999頃)蔵開中)
    2. さっと出る。ぱっと立つ。うちず。
      1. [初出の実例]「谷風にとくる氷のひまごとに打出(うちいづる)なみや春のはつ花〈源当純〉」(出典:古今和歌集(905‐914)春上・一二)
    3. 勢いよく出発する。特に、軍勢が進み出る。うちず。
      1. [初出の実例]「すずろに馬にうちのりて打出にけり」(出典:発心集(1216頃か)五)
      2. 「平太入道定次を大将として〈略〉近江国へうち出たりければ」(出典:平家物語(13C前)一〇)
    4. 敵の中へ勢いよく進み入る。うって出る。うちず。
      1. [初出の実例]「すはや城の中より打出たるは。是こそ敵の運の尽くる処の死狂(しにくるひ)よ」(出典:太平記(14C後)七)
  2. [ 2 ] 〘 他動詞 ダ下二段活用 〙
    1. [ 一 ] たたいて音や火などを出す。
      1. [初出の実例]「弁少将、拍子うちいでて」(出典:源氏物語(1001‐14頃)篝火)
    2. [ 二 ] ( 「うち」は接頭語 )
      1. ひょいと出す。特に、出衣(いだしぎぬ)をする。うちいだす。→出衣
        1. [初出の実例]「黒つるばみの御こうちぎうちいでて、見せ奉り給へり」(出典:宇津保物語(970‐999頃)国譲中)
      2. ひょいと口に出す。また、声をあげて唱える。うちいだす。
        1. [初出の実例]「さきざきも申さんと思ひしかども〈略〉さのみやはとて、打いで侍りぬるぞ」(出典:竹取物語(9C末‐10C初))
      3. 文字や模様に表わす。
        1. [初出の実例]「白銀の御衣筥、海浦(かいふ)をうちいでて」(出典:紫式部日記(1010頃か)寛弘五年九月一九日)

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