打越荷物(読み)うちこしにもつ

精選版 日本国語大辞典 「打越荷物」の意味・読み・例文・類語

うちこし‐にもつ【打越荷物】

  1. 〘 名詞 〙 江戸時代商慣習一つ江戸問屋を経ないで、直接に上方奥羽の間を流通した商品。江戸の問屋を保護するため、しばしば禁止された。打ち越し。
    1. [初出の実例]「打越荷物之儀者、一同立合、古格之通入札に致し」(出典:諸問屋再興調‐七・嘉永六年(1853)七月一一日・蚊帳打越荷物出入済口証文写、町奉行所宛)

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改訂新版 世界大百科事典 「打越荷物」の意味・わかりやすい解説

打越荷物 (うちこしにもつ)

江戸時代の商慣習では,大坂より東北地方へ荷物を送る場合,いったん江戸の問屋へ送り,そこから再度江戸問屋の手を経て送ることが定められていた。この規則を守らずに,大坂から直接に送ったり,逆に東北地方から江戸の問屋を経由しないで,大坂へ積み送る場合を〈打ち越す〉といい,その商品を打越荷物といって,禁止されていた。それは幕府が株仲間を保護するためにとった商業政策であった。また1858年(安政5)の通商条約締結により,交易自由の原則が打ち出されたため,江戸問屋を無視して直接開港場たる神奈川に送荷する商人が激増した。そこで60年(万延1)に雑穀,水油,蠟,呉服生糸の5品に限り,江戸打越荷物を禁止するお触れが出された。これを五品(ごひん)江戸廻令と称し,幕府は上記5品の輸出に限り江戸の問屋経由とし,神奈川直送貿易を禁止した。
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世界大百科事典(旧版)内の打越荷物の言及

【三橋会所】より

…65組の問屋仲間はそれぞれ株数が固定され,株の譲替え以外に新規の仲間加入は認められないことになった。以後問屋仲間は,問屋を経由しない商品荷物を抜荷(ぬけに),打越荷物(うちこしにもつ)として厳しく取り締まることを主張し,仲間外商人をさかんに摘発した。買米によって莫大な損失を被ったにもかかわらず,杉本はさらに江戸の米会所の経営を十組持ちにすることをはかり,問屋仲間内部からも激しい反発をよんだ。…

※「打越荷物」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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