投資紛争解決条約
とうしふんそうかいけつじょうやく
Convention on the Settlement of Investment Disputes between States and Nationals of Other States
投資受入国と外国人投資家間の紛争を調停と仲裁により解決し、発展途上国への民間投資を促進するために世界銀行理事会が1965年に採択した条約(翌年発効)。日本については67年(昭和42)発効。従来はこのような投資紛争については、投資家本国の外交保護権による介入または投資受入国の国内裁判所への提訴も、十分な救済が得られなかった。この条約では、私人たる投資家であって、投資受入国以外の締約国の国籍を有する自然人または法人、さらに受入国の準拠法に基づいて設立された法人であっても、他国の監督・規制に従っているものは、本国政府の介入を待たずに独自に出訴が認められるとした点に特色がある。当事者は、投資から直接生ずる法的紛争に限って、投資紛争解決国際センター(ICSID)に付託できる。同センターは理事会(締約国代表各1名および世銀総裁)と事務局から構成され、前記の紛争を調停・仲裁手続に付するための便宜と基盤を提供し、調停・仲裁人名簿を常備する。仲裁準則は当事者の合意によるが、合意のない場合には、投資受入国の国内法および関連の国際法を適用する。
[山本草二]
出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例
投資紛争解決条約
とうしふんそうかいけつじょうやく
Convention on the Settlement of Investment Disputes between States and Nationals of Other States
外国民間投資を受け入れた国と,外国人投資家との紛争を円滑かつ迅速に解決することを目的とする条約。正式名称は「国家と他の国家の国民との間の投資紛争の解決に関する条約」。世界銀行の提唱により,1965年3月18日にワシントンD.C.で作成され,1966年10月14日に発効した。本条約に基づいて投資紛争解決国際センターが設立され,投資紛争の調停あるいは仲裁による解決にあたるとされた。加盟国は 2018年現在,154ヵ国。
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世界大百科事典(旧版)内の投資紛争解決条約の言及
【国際裁判】より
…個人の出訴権は国家間の合意に基づき認められるが,たとえば,前述の中米司法裁判所や第1次大戦後の混合仲裁裁判所では,個人の出訴権が認められていた。現在では,[ヨーロッパ共同体司法裁判所](ヨーロッパ司法裁判所)の場合,ヨーロッパ共同体の機関の行為に関し個人も出訴権を認められており,また1965年の投資紛争解決条約により,投資紛争解決国際センターが設置され,締約国の国民が他の締約国との合意に基づき,調停および仲裁裁判の手続を請求する権利を認められている。さらに,国際機構は出訴権を認められていないが,国際司法裁判所の場合,国連の総会と安全保障理事会,国連のその他の機関および専門機関は,法律問題について勧告的意見要請権を付与されている。…
【国際商法】より
…商事に関する国際私法を意味するのが通常であるが,国際的な商事関係を直接に規定する法を意味する場合もある。
【国際私法としての国際商法】
国際的な民商事関係に関する争いが発生した場合,例えば外国人の夫に対し日本人妻が離婚の請求をするとか,日本の会社が輸入代金の支払に関して日本の裁判所に訴えられたような場合,現在の法統一の状況ではその問題に関する国際的に統一された民商法が存在しないのが通常であり,したがって裁判所は,関連ある国の民商法のうち,妥当とされるいずれかの国の法(これを準拠法という)を選択し,これを基準として判決を下すという方法を採るのが原則である。…
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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」