押出遺跡(読み)おんだしいせき

日本歴史地名大系 「押出遺跡」の解説

押出遺跡
おんだしいせき

[現在地名]高畠町深沼 押出

大谷地おおやち湿地の南西部(標高約二四〇メートル)にある縄文時代前期の低湿性集落跡。昭和四七年(一九七二)沼尻ぬまじり排水路掘削に際して注目された。昭和六〇年から六二年にかけて、米沢―南陽道路(国道一三号)の建設に伴って緊急発掘調査された。現地表下二メートルに生活面があり、調査区四〇〇〇平方メートルの範囲に大壁構造かとみられる三三棟の打込杭式の平地住居跡が検出され、焼けた礫を積んだ石塚も確認されている。

出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「押出遺跡」の意味・わかりやすい解説

押出遺跡
おんだしいせき

山形県東置賜郡高畠町深沼字押出に所在する縄文時代前期の集落跡。 1985年から3年間にわたって行われた発掘調査によって約 35棟の住居跡の存在が確認された。これら住居跡の形態は,通常の同時期の遺跡でみられる「竪穴式住居」とは異なり床を掘下げない平地式の「壁立式住居」であり,柱に丸太あるいは割材を用いて先端をとがらせて打込んである。また掘立柱による大型の建物も1棟検出されている。出土した遺物には赤と黒の2種の漆を使用した彩文土器や漆塗りの木製大杯,その他各種漆製品や櫂 (かい) ,杓子 (しゃくし) ,へら状・弓状の木製品,縄・編物断片,基部の付いた尖頭器や石鏃 (せきぞく) などのほかに異形石器,石製装飾品,漆の塊といった特殊なものもある。特に漆製品の存在はきわめて高度な漆技術があったことを裏付けるものである。

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