為替(かわせ)管理が厳しい時代に、外国との取引の決済に用いる通貨として国によって指定された通貨をいう。普通、交換性のある通貨が選ばれる。わが国の場合、「外国為替及び外国貿易管理法」に基づき大蔵大臣によって米ドル、英ポンドなど先進国の通貨が指定され、これ以外の通貨を用いる場合には、個別に大蔵大臣の許可が必要であった。この制度は、ほとんどの国の通貨が交換性をもっていた第二次世界大戦前の自由為替時代には不要であったが、戦後は米ドルなど特定の通貨を除いては交換性が失われていたので、国際決済の安全性を確保するために必要となったのである。その後、世界的に自由化が進み各国の通貨交換性が回復するにつれて指定通貨が増え、やがてこの制度はしだいに廃止された。わが国においても、対外支払いについては1962年(昭和37)に、対外受取りについては71年に廃止された。
[土屋六郎]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報