(読み)くすぐったい

精選版 日本国語大辞典 「擽」の意味・読み・例文・類語

くすぐった・い【擽】

〘形口〙 くすぐった・し 〘形ク〙
皮膚の敏感なところを、物がさわったり、くすぐられたりして、我慢できないほどむずむずした感じがする。こそばゆい。
洒落本・当世左様候(1776)「ヲヲくすぐってェわな」
② ほめられたりして、きまりがわるい。てれくさい。
※彼岸過迄(1912)〈夏目漱石風呂の後「『貴方は堅いからね〈略〉』敬太郎は少し羞痒(クスグッ)たいやうな気がした」
③ 物足りない。
※洒落本・遊子方言(1770)発端「今日一日酔ってはゐるけれど、此やうな小盃では少しくすぐったいやうじゃ」
くすぐった‐が・る
〘自ラ五(四)〙
くすぐった‐げ
〘形動〙
くすぐった‐さ
〘名〙

くすぐ・る【擽】

〘他ラ五(四)〙
① 皮膚の敏感な部分に軽く触れて刺激し、むずむずした、こそばゆい感じを起こさせる。こそぐる。〔名語記(1275)〕
人情本・春色梅美婦禰(1841‐42頃)五「此様に言っても物を言はねへなら擽(クスグ)るゼ」
② 風などが軽く当たる。
巷談本牧亭(1964)〈安藤鶴夫つばめの唄「夜の微風湯浅の耳をくすぐる」
演芸文章会話などで、ことさらに人を笑わせる。また、茶化したりからかったりする。
※化銀杏(1896)〈泉鏡花〉五「(まあ! お貞さん。旦那様は飛だ御親切なお方だねえ)サ酷く擽(クスグ)ったもんだらうじゃあないかえ」
④ 人の心に働きかけていい気持にさせる。
※光と風と夢(1942)〈中島敦〉五「真実、虚栄心をくすぐられる所(どころ)でなく」

くすぐり【擽】

〘名〙 (動詞「くすぐる(擽)」の連用形名詞化)
① くすぐること。
浮雲(1887‐89)〈二葉亭四迷〉一「くすぐりに懸った其の手頭(てさき)を払らひ除けて」
② 演芸、文章などで、観客読者をことさらに笑わせ、また、喜ばせようとすること。
※日本脱出記(1923)〈大杉栄パリの便所「歌も話しも、割りによく分るのでうれしかったが、それがあんまりつまらないくすぐりばかりなので」

こそぐった・い【擽】

〘形口〙 くすぐったい。こそばゆい。こそばい。
※洒落本・郭中奇譚(1769)弄花巵言「こそぐったい、はなせはなせ」
こそぐった‐さ
〘名〙

こそぐ・る【擽】

〘他ラ四〙 指先などで皮膚の一部を刺激して、くすぐったい感覚を起こさせる。また、おかしい事をいったり、おだてるような事をいったりして、くすぐったい思いを起こさせる。くすぐる。〔新撰字鏡(898‐901頃)〕
※虎明本狂言・仁王(室町末‐近世初)「あまりふしんなほどに、こそぐってみう」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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