ヤク(その他表記)yak

翻訳|yak

デジタル大辞泉 「ヤク」の意味・読み・例文・類語

ヤク(yak)

ウシ科の哺乳類。肩高1.5~2メートル。雌雄とも角があり、体の下面および尾に長毛が密生し、ふつう黒褐色。チベットからヒマラヤ山脈にかけての高地にすむが、野生のものはきわめて少ない。古くから家畜化され、荷役用・乳用ふん燃料に利用される。犛牛りぎゅう・ぼうぎゅう
[類語]雄牛雌牛子牛種牛役牛乳牛肉牛牧牛猛牛和牛水牛野牛バイソンバッファロー

や・く

[接尾]《動詞五(四)段型活用》擬声語・擬態語などに付いて、そのような状態を呈する、そのような動作をする意を表す。「ささ―・く」「つぶ―・く」

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精選版 日本国語大辞典 「ヤク」の意味・読み・例文・類語

ヤク

  1. 〘 名詞 〙 ( [英語] yak ) ウシ科の哺乳類。肩高約一・五~二メートル。ウシに似ているが体の下面に長毛がたれる。雌雄とも上方に湾曲した角をもつ。野生種の毛色は黒褐色で、家畜化したものには黒白斑・白色などもある。チベット高原ヒマラヤ地方の原産で、野生種は標高四五〇〇~六五〇〇メートルの高山の草原にすむ。原産地では役用・食用・乳用とし、毛は衣服に利用。こぶ牛などとの間に雑種もある。犛牛(りぎゅう)。ぼうぎゅう。〔外来語辞典(1914)〕

や・く

  1. 〘 接尾語 〙 ( 四段型活用 ) 主として擬声語擬態語などに付いて、そのような状態を呈すること、そのような動作をすることの意を表わして動詞を構成する。「ささやく」「つぶやく」など。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「ヤク」の意味・わかりやすい解説

ヤク
やく
yak
[学] Bos grunniens

哺乳(ほにゅう)綱偶蹄(ぐうてい)目ウシ科の動物。カシミールのラダック県、チベット、甘粛(かんしゅく)省の海抜4000~6000メートルの山岳地帯に生息する。雄は体長2.5~3メートル、肩高1.6~2メートル、尾長80~100センチメートル、体重800キログラムと大きいが、雌では体長2~2.2メートル、肩高1.5メートル、尾長60~70センチメートル、体重300~350キログラムと小さい。雌雄ともに角(つの)があり、雄の角は黒色で長さ80~90センチメートル、雌では小さい。肩は隆起しているが、背はほぼ平らで、体の下面と側腹には50~60センチメートルに及ぶ長毛が密生し、尾のほとんどにも長毛が生えている。体色は、雄は黒褐色ないし暗褐色、雌ではやや淡色を示す。家畜化したものは野生種より小形で、体色も赤、褐色、黒、白、斑(はん)などさまざまである。山岳地帯に群れをなしてすむが、雄と、雌および若獣は別の群れをつくる。日中は斜面で休息し、早朝と夕刻に草などの植物質をあさる。繁殖期は6~11月、255~300日の妊娠期間を経て、1産1子を産む。家畜種は運搬用、毛用、肉用、乳用などに用いられる。

中川志郎

民俗

野生の黒褐色のヤクは神聖視された。儀礼的に行われるヤクの踊りでは、ヤクは神聖な山の神を表す。ボン教の経典でも、野生のヤクを土地の主とし、天幕をつくるためにヤクの毛をむしったので、土地の主の憎しみを招いたという伝えを記す。家畜のヤクは、荷役に使うほか、犂(すき)を引かせて耕耘(こううん)にも用いる。チベットでは、土地の広さはヤクの耕耘の量で示される。乳用としてもヤクは重要である。そのほか、乾燥させた糞(ふん)は炊事の燃料、毛皮は衣服に利用する。シェルパの人々は、角(つの)はチョルテン(堆石(たいせき)塚)に供える。チョルテンには、死者の名を記した紙を納めてあり、おそらくはヤクの霊もともに供養するのであろう。

[小島瓔


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改訂新版 世界大百科事典 「ヤク」の意味・わかりやすい解説

ヤク
yak
Bos grunniens

体が長毛でおおわれた大型のヤギュウ。偶蹄目ウシ科の哺乳類。チベットとヒマラヤ,中国西部の高地に分布。雄は体長3.25mに達し,肩高2mを超すものもあり,体重は1000kgほどだが,雌は小型で体重は雄の1/3くらいである。体をおおう長毛は黒褐色で,角も黒い。高山生で,夏は万年雪のある標高6100mあたりまで姿をみせるが,その他の時期は下方で生活する。雌と子は大きな群れをつくるが,雄は単独かあるいは12頭くらいまでの小群でいて,それぞれ別々に行動し,種々の草や地衣類を食べる。9月に始まる交尾期には雄は雌をめぐって争う。妊娠期間約9ヵ月,1産1子で,寿命は25年の記録がある。

 原住民はヤクを家畜とし,荷役用と乳用に飼育する。ラマ教ではヤクを殺すことは禁じているが,病気のものを殺すことはあり,皮をテントなどに用いる。地方によっては肉用とする。また,糞を乾かし燃料として用いる。家畜ヤクの雄とウシの雌を交配してゾーdzoと呼ばれる雑種がつくられるが,ゾーは比較的低地での荷役に,ヤクを高地での荷役に使用することが多い。近年では雌ウシにイギリス産肉用種のハイランド種を用いて雑種をつくり,それをヤーコウyakowと呼び,寒冷地での飼育に適した肉用品種としている。

 なお,家畜のヤクが増加するにつれ,野生種はきわめて少なくなり,絶滅が心配されている。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「ヤク」の意味・わかりやすい解説

ヤク
Bos grunniens; yak

偶蹄目ウシ科。体長 2.9m,体高 2m,体重 500kg内外。体は黒い長毛でおおわれ,長毛は蹄 (ひづめ) のあたりまで達するほど長く伸びる。角も長く,1mほどにもなる。チベットの標高 6000mぐらいの高地に群れをつくってすむ。寒さに強く,冬になると風をよけるため谷間に移動する。一部は家畜化され,労役用,毛皮用,乳用,肉用として使われている。野生のものの数は少く,国際保護動物に指定されている。

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小学館の図鑑NEO[新版]動物 「ヤク」の解説

ヤク
学名:Bos mutus

種名 / ヤク
科名 / ウシ科
解説 / 高山にすむ大型のウシのなかま。30~50頭の群れで生活します。
体長 / 2~3.3m/肩高1.8~2m
体重 / オス800~1000kg、メス300~400kg
食物 / 草、地衣類
分布 / チベット高原の標高3500m以上の草原
絶滅危惧種 / ☆

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百科事典マイペディア 「ヤク」の意味・わかりやすい解説

ヤク

【ぼう】牛(ぼうぎゅう)とも。偶蹄(ぐうてい)目ウシ科の哺乳(ほにゅう)類。肩高1.6〜1.9m,尾72cmほど。全身柔らかい長毛でおおわれ,野生種は黒色。チベットとヒマラヤの標高3600〜6000mの高地にすむ。家畜化されたものは役用とされ,乳,肉は食用に,毛は毛織物にされる。低地での飼育はむずかしい。

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世界大百科事典(旧版)内のヤクの言及

【テント】より

…東はチベットから西は北アフリカまで,乾燥地域に広くみられる。チベットでヤクの毛を素材として用いる以外,ほとんどの地域では黒ヤギの毛で織った織布をテント地として使用している。北アフリカなど一部の地域では,ヤギの毛にヒツジやラクダの毛をまぜて使うこともある。…

【ヒマラヤ[山脈]】より

…カシミール人は色の白いコーカソイド型の特徴をもち,インド語派ダルド語群の母語を話す。耕地では,稲,麦類,トウモロコシなどが作られ,豊かな牧野では,羊,ヤギ,ヤクなどの家畜が放牧される。
[チベット文明圏の人々]
 ヒマラヤにおけるチベット文明の世界は,主嶺の北側,チベット高原の縁辺をなす高原,谷間に展開する。…

※「ヤク」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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