日本大百科全書(ニッポニカ) の解説
改訂出来事インパクト尺度
かいていできごといんぱくとしゃくど
Impact of Event Scale-Revised
PTSD(心的外傷後ストレス障害)の症状を測定するために被験者自らが記入するチェックリスト(質問紙)の改訂版。IES-R(Rは改訂版を意味する)と略称される。1979年にできたIESの改訂版として、アメリカの精神科医ワイスDaniel WeissとマーマーCharles R. Marmarが開発し1996年に発表した。アメリカ精神医学会が作成するDSM(精神疾患診断・統計マニュアル)のPTSD診断基準に則し、外傷体験(出来事)がPTSDの定義と合致するか、さらに外傷の再体験(侵入)症状、過覚醒(かくせい)(覚醒亢進(こうしん))症状、回避と麻痺(まひ)の症状の定義にあうかが診断できる。22項目の質問から構成されており、このうち過覚醒症状に関する質問が改訂版で加えられた。心的外傷を体験した人の症状を幅広く測定することが可能な尺度で、原因を探る横断調査や災害時のPTSDを見極めるスクリーニングなどの際に日本でも活用されている。
外傷体験とは、地震などの自然災害、戦争被害、暴力や事故など生命の危機体験、性的被害、家族の死などの喪失体験などをさし、これらの強いストレスを伴う外傷体験によって多彩な心理的反応(トラウマ反応)が引き起こされる。外傷体験後、精神的後遺症が1か月を過ぎても残っている場合にPTSDと診断される。1か月未満の場合は急性ストレス障害(ASD:acute stress disorder)と診断され、こちらは自然治癒することも多い。精神的後遺症とは、外傷体験に加え再体験(フラッシュバックなど)により不安や恐怖がよみがえり、刺激に敏感になって眠れないなど過度の緊張状態が続く過覚醒や、再体験や過覚醒を回避しようと外的刺激に反応しなくなり、活動も低下して無気力な状態が続く回避や麻痺などの症状をいう。
[編集部]