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性犯罪(読み)セイハンザイ

世界大百科事典 第2版の解説

せいはんざい【性犯罪】

性に関連する犯罪の総称刑法典には,公然わいせつ,わいせつ文書等頒布強姦,強制わいせつ,淫行勧誘,重婚,わいせつ・結婚目的の略取,誘拐等の処罰が規定されており,特別法には売春防止法軽犯罪法に関連規定があるほか,各種条例による取締りが行われている。(なお,1995年刑法の表記現代化により,従来の〈猥褻〉は〈わいせつ〉と改められた)一般犯罪の中にも,性衝動を契機に行われるものがあり,姦淫・わいせつ目的の殺人,傷害,女性の下着の窃盗,窃視やわいせつ目的の住居侵入,晴れ着魔等の器物損壊等があげられる。

出典 株式会社平凡社世界大百科事典 第2版について 情報

大辞林 第三版の解説

せいはんざい【性犯罪】

人の性的自由を侵害する、または善良な性風俗を乱す犯罪の総称。前者は強姦罪・強制猥褻わいせつ罪が、後者は公然猥褻罪・猥褻物頒布罪が代表的。

出典 三省堂大辞林 第三版について 情報

日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

性犯罪
せいはんざい

「性犯罪」につき確立した定義があるわけではないが、広義では性に関するすべての犯罪をいい、狭義では刑法第二編第22章に規定されたわいせつ、強制性交等の罪をさすものと考えておく。性欲は食欲とともに、人間の基本的な本能に属するが、性的行動や性文化は時代や地域によって大きな違いがみられ、歴史的、相対的であるから、性の領域に対する公権力の介入・干渉は、法の機能をも考慮に入れて検討されなければならない。とくに、「性の自由」とか「性の解放」が時代的風潮となっている現代においては、性文化の歴史性と相対性を十分念頭に置く必要があろう。
 広義の性犯罪についていえば、その根拠(保護法益)として、大きく次の三つに大別することができよう。
 第一に、個人の性的自由を保護目的とする一連の刑罰法規がある。すなわち、刑法第176条から第181条までの強制わいせつ罪、強制性交等罪、監護者性交等罪などがそれである。これらの罪は、被害者の性的自由を侵害して、性的衝動を満足させようとする点において性犯罪の典型である。ただ、「13歳未満の者」に対する罪については、第三点として述べる青少年を保護する目的が含まれている。
 第二に、社会法益としての健全な性道徳または性風俗を保護するさまざまな刑罰法規がみられる。これは、さらに次の三つのグループに分類することができる。
(1)性行為非公然の原則とよばれる性的タブーを侵害するものとして、刑法第174条の公然わいせつ罪、同法第175条のわいせつ物頒布等の罪がこれにあたる。このうち、後者の罪は、性表現に関するものだけに、憲法が保障する自由権、とくに表現の自由(21条)との調整が大きな問題となり、ローレンスの『チャタレイ夫人の恋人』やサドの『悪徳の栄え』などの小説をめぐって文芸裁判としてしばしば争われてきた。
(2)一夫一婦制を基本とする家庭(夫婦)生活の保護を目的とする罪として、刑法第184条の重婚罪がある。なお、かつて姦通(かんつう)罪(旧刑法183条)の規定があったが、1947年(昭和22)刑法一部改正で、本罪は廃止された。
(3)性の非商品化(非営利化)の原則に関連して、1956年の売春防止法により、売春を助長する行為等(売春の勧誘、周旋、売春をさせる契約、場所の提供、売春をさせる業など)が処罰されることとなった(ただ、売春やその相手方となること自体は処罰の対象となっていない)。それにもかかわらず、この売春防止法は、実際上、手口の巧妙化、ネット化などによって、いわゆるざる法化していることが指摘されている。
 第三に、青少年保護の立場から、とくに青少年(満18歳未満の者)とのみだらな性交または性交類似行為を禁止し、これに違反すると処罰される(「東京都青少年の健全な育成に関する条例」18条の6、24条の3など)。また、児童(前記「青少年」と同じく満18歳未満の者)に対する買春、児童買春の周旋・勧誘のほか、児童ポルノ所持・提供などの行為も処罰される(「児童買春児童ポルノ処罰法」4条~7条)。
 また、性犯罪そのものではないが、性的な動機や衝動から、窃盗罪、住居侵入罪、傷害罪などが犯されるケースがあることを指摘しておこう。軽犯罪法第1条23号の窃視罪(のぞき)はこの種の犯罪の典型といえよう。なお、アメリカ合衆国においては、再犯の危険性がある性犯罪者の名前や住所、犯罪歴などの個人情報を住民に公開することを定めた「メーガン法」が制定されている。[名和鐵郎]

性犯罪規定改正の動向

2017年(平成29)7月、刑法における性犯罪の規定は110年ぶりに大幅な改正がなされた。性犯罪については事案の増加と多様化に対応するため、第177条の強姦罪については罪名を変更し処罰範囲を拡大した。すなわち、(1)罪名を強姦罪から強制性交等罪に変更し、(2)処罰の対象として姦淫のほか肛門(こうもん)性交、口腔(こうくう)性交を追加するとともに、被害者については女性だけではなく男性も対象とし、(3)監護者性交等罪を新設した。また(4)強姦罪の法定刑は、従来は3年以上の有期懲役であったが、この改正によって5年以上の有期懲役に引き上げられた。
 罪名が強姦罪から強制性交等罪に改定されたことに伴って、刑法第178条2項の準強姦罪(3年以上の懲役)は準強制性交罪(5年以上の懲役)に、第181条の強姦致死傷罪(無期または5年以上の懲役)は強制性交等致死傷罪(無期または6年以上の懲役)に、第241条の強盗強姦罪(無期または7年以上の懲役)は強盗・強制性交等罪(無期または7年以上の懲役)に、強盗強姦致死傷罪(死刑または無期懲役)は強盗・強制性交等致死傷罪(死刑または無期懲役)へと変更された。これらの罪の未遂も処罰される(同法180条、243条など)。
 集団強姦等罪(旧刑法178条の2。4年以上の懲役)および集団強姦等致死傷罪(旧刑法181条3項。無期または6年以上の懲役)は、2014年の改正の際に強姦罪等よりも重い刑を科す趣旨で設けられたが、前述のように強制性交等罪などの法定刑が引き上げられたため、集団強姦等罪および同致死傷罪の規定は削除され、強制性交等罪および同致死傷罪に含められることになった。
 これらの罪は、改正前の刑法第180条では被害者の意思やプライバシーを尊重して親告罪(告訴がなければ公訴を提起できない罪)とされていたが、改正後は、加害者等からの干渉や報復を回避するため、この規定が削除され非親告罪となった。[名和鐵郎]

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