故旧忘れ得べき(読み)こきゅうわすれうべき

精選版 日本国語大辞典 「故旧忘れ得べき」の意味・読み・例文・類語

こきゅうわすれうべき コキウ‥【故旧忘れ得べき】

小説高見順作。昭和一〇~一一年(一九三五‐三六発表左翼運動に挫折した知識人良心呵責虚無的な生活を描いた転向文学傑作一つ

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デジタル大辞泉 「故旧忘れ得べき」の意味・読み・例文・類語

こきゅうわすれうべき〔コキウわすれうべき〕【故旧忘れ得べき】

高見順の小説。昭和11年(1936)刊。大正末期から昭和初期に左翼運動に献身した学生たちが、10年後に虚無と退廃に落ち込む姿を描く。

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改訂新版 世界大百科事典 「故旧忘れ得べき」の意味・わかりやすい解説

故旧忘れ得べき (こきゅうわすれうべき)

高見順長編小説。1935-36年,《日暦》および《人民文庫》に連載。36年人民社より刊行。前半の《日暦》に掲載された部分で第1回芥川賞の候補となった。作者自身の旧制高校時代から大学卒業後転向まで,すなわち大正末から昭和10年代までの体験にもとづく回想風の小説。主人公の小関,副主人公の篠原はともに作者の分身といわれる。社研,ダダ,左翼と時代の流れを生きた彼らは,いまは世の中の谷間に取り残されている。自殺したかつての仲間の葬儀に集まった彼らは,胸のモダモダを吐き出すように《故旧忘れ得べき》を歌う。高見順独特の饒舌体による転向小説。
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