文芸雑誌。1936年(昭和11)3月創刊,38年1月廃刊。臨時増刊2冊を含み通巻26冊。人民文庫社発行。奥付の編集発行人は本庄陸男(むつお),実質的には武田麟太郎が主宰。プロレタリア文学崩壊後のファシズムの気流と,とりわけ文壇的には文芸懇話会や日本浪曼派の日本主義的風潮に抗して〈散文精神〉を主軸にリアリズムの発展を主張したが,戦後は,日本浪曼派とともに〈転向といふ一つの木から出た二つの枝〉(高見順)という見方をされた。高見の《故旧忘れ得べき》,武田の《井原西鶴》をはじめとして立野信之,間宮茂輔,渋川驍らの小説のほか,評論,座談会などにも特色を発揮した。発禁や執筆者グループの一斉検挙のほか内部事情もあって日中戦争開始後半年で廃刊。
執筆者:高橋 春雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
文芸雑誌。1936年(昭和11)3月創刊、38年1月終刊。臨時増刊『現代代表作全集』2冊を含み、全26冊。人民社発行。武田麟太郎(りんたろう)が主宰し、同人雑誌『日暦(にちれき)』の高見順や『現実』の本庄陸男(ほんじょうむつお)ら、敗退したプロレタリア文学系の作家たちをおもな執筆グループとした。文芸懇話会の結成や『日本浪曼(ろうまん)派』の創刊など、文化統制的、超国家主義的傾向に反発し、「散文精神」を主張するなどした進歩的文芸雑誌。巨視的には、『日本浪曼派』とともに「転向という一本の木から出た二つの枝」(高見順)という見方もできる。高見『故旧(こきゅう)忘れ得べき』、武田『井原西鶴』、立野信之(たてののぶゆき)『流れ』、渋川驍(ぎょう)『樽切湖(たるきりこ)』、間宮茂輔(まみやもすけ)『あらがね』などが載る。
[高橋春雄]
…創刊に先だって《コギト》に掲載された保田執筆の〈広告〉の高踏的なロマン主義の主張がおおきな反響を呼ぶ。第3号に載った保田の〈反進歩主義文学論〉と亀井の〈生けるユダ(シェストフ論)〉に,プロレタリア文学運動壊滅後の転形期を生きるこの派の主張がうかがわれ,武田麟太郎,高見順ら《人民文庫》(1936‐38)派の写実主義と鋭く対立した。小説では,太宰治の《道化の華》,緑川貢の《娼婦》,檀一雄の《衰運》,伊藤佐喜雄の《花の宴》などが注目される。…
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出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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