平安時代に困窮者の救済費用を調達するために設定された田。賙急(しゆうきゆう)田,賑救田,賑給(しんごう)田ともいわれ,惸独(けいどく)田も類似の性格をもつ。738年(天平10)の〈和泉監正税帳〉には,民部省の指示で〈急戸〉89戸に対し,稲穀が支給されたことがみえ,急は貧困・疾病等による困窮状態をさすといえる。救急とは窮状を救うことであるが《続日本紀》延暦8年(789)4月の記事には,凶作に遭った諸国に対し,政府は稲穀を安い時期の価格で農民に売り与えるよう指示し,これを〈救急〉と称したことがみえる。救急田の場合,一定の土地を準備して農民に貸与し,その地子稲を救急の費用に充てた。和気清麻呂の遺旨により備前国に置かれた100町の賑救(給)田,844年(承和11)相模国司橘永範が設立した救急院で窮乏農民を救済する費用を賄うために開発した土地,863年(貞観5)常康親王が救急料に充てるために延暦寺に施入した130町の土地等はその例であるが,あまり一般的ではなかったと思われる。後には《延喜式》にみえるように諸国に平均数万束の救急稲が準備され,それを貸し付けた利息を救急の財源とするようになった。
→賑給
執筆者:舟尾 好正
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
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