教育運動(読み)きょういくうんどう

日本大百科全書(ニッポニカ) 「教育運動」の意味・わかりやすい解説

教育運動
きょういくうんどう

国家の教育政策や教育行政から離れ、あるいは対抗して社会的に組織される教育についての主張や行動の総称。個人や団体が特定の教育的目標を実現するためにつくりだす運動であるから、内容的にも形態的にも多様である。現代では公権力の組織する国民教育の果たす役割が大きいので、これにかかわる事柄の修正や改革を求める運動を意味する場合が多い。運動の中心に教師が位置することも多く、教育労働運動と重なる局面もみられる。たとえばアメリカの進歩主義教育運動や、日本の大正期の新教育運動、生活綴方(つづりかた)運動、あるいは第二次世界大戦後の高校全入運動などがある。しかし教育運動はこれにとどまるわけではない。国民教育とは相対的に無関係に組織される自己教育運動、たとえば労働者・農民教育運動(労働学校、農民学校)、地域教育運動(郷土教育運動、識字教育運動、文化・啓蒙(けいもう)運動)、さらには青少年婦人の自主的な各種学習運動も当然この概念に含まれる。

[尾崎ムゲン]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「教育運動」の意味・わかりやすい解説

教育運動
きょういくうんどう

教育に関する一定思想や主張,実践教員や社会に普及する組織的活動。たとえば 17~18世紀ヨーロッパの慈善学校運動,19世紀後半のヨーロッパやアメリカにおける公立学校設立運動,大学拡張運動,フレーベル派の幼児教育の運動,第1次世界大戦後世界的に展開された新教育運動,教育方法面でペスタロッチ主義のオスウィーゴ運動やヘルバルト派の教授学説の宣伝,1930年代のアメリカ,ドイツの教育課程改造運動などがある。日本特有のものとして生活綴り方運動,新興教育運動,教育科学研究会の運動などがあげられる。教育運動は必ずしも教員だけの運動ではなく,父母 (PTA) ,市民,労働者 (学習会) ,宗教団体と提携するなど多様な形態をとる。

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