幼児教育(読み)ようじきょういく(英語表記)early childhood education

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

幼児教育
ようじきょういく
early childhood education

幼児期は身体運動の充実期であり,基本的生活習慣の自立するときでもあり,人格形成の基盤をつくる重要な時期である。したがってその教育にあたっては,知的教育に偏することなく,生活全般を通じてその発達を助長するために,好ましい経験を与えるとともに,よい文化財や教材を与えることを考えるべきである。幼児教育の場はまず家庭であるから,両親による教育を充実する必要がある。3~4歳以後は,同一年齢の友人との接触の機会を与え,徐々に集団生活を経験させることが望ましい。幼児教育施設には,幼稚園のほかに,家庭での保育に欠ける幼児を保育,教育する目的をもった保育所がある。

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百科事典マイペディアの解説

幼児教育【ようじきょういく】

小学校就学前の幼児を対象とする教育。就学前教育とも。近世以降コメニウスらによりその重要性が認識された。幼児期の特性に基づく性格形成,基本的な習慣の形成等を目的とする。家庭保育と施設保育に大別。後者の施設には教育的意図を強くもった幼稚園と,社会事業的な性格の保育所の2系譜があり,それぞれフレーベルオーエンらによって基礎が築かれた。日本でも明治以後これらの施設が設けられ,現在それぞれ学校教育法児童福祉法規定されているが,両者一元化懸案とされ,また就学前教育の義務化の主張もある。

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世界大百科事典 第2版の解説

ようじきょういく【幼児教育】

ふつう満1歳から小学校就学までの時期を幼児期といい,この時期の子どもを対象とした教育を幼児教育という。義務教育年齢である学齢以前の教育であるので〈就学前教育〉ともよばれる。幼児については児童福祉法(1947公布)の規定も同じであり,同法では1歳未満を乳児としている。乳児期は生活のすべてを両親はじめおとなに依存しなければならない時期である。これに対し1歳前後からひとり立ちし,まもなく二足歩行を始め,また特定音声と特定の対象や状況とを結びつけ,言葉を理解するようになる。

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大辞林 第三版の解説

ようじきょういく【幼児教育】

幼児に対する教育。幼稚園・保育所・家庭での教育など。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

幼児教育
ようじきょういく

幼児期に行われる教育のこと。幼児期は、乳児期と児童期の間の時期であり、おおよそは満1歳から就学始期までの期間をさす。日本では、義務教育制度により、就学時期は満6歳に達した年の4月1日からとされていることから、幼児期は満1歳から満6歳の3月31日までの時期といえる。また、教育基本法には「幼児期の教育は、生涯にわたる人格形成の基礎を培う重要なものであることにかんがみ、国及び地方公共団体は、幼児の健やかな成長に資する良好な環境の整備その他適当な方法によって、その振興に努めなければならない」(第11条)とあり、幼児期の教育は日本における教育の原則の一つであると規定されている[宮田まり子・秋田喜代美]

家庭における幼児教育と制度的な幼児教育

人類における幼児教育の始まりは、乳幼児期を含む子ども期の発見にある。子ども期はこれまでさまざまなアプローチによってみいだされてきた。たとえばフレーベルは、誕生を神性のあらわれとしたことから、子ども期のなかでもとりわけ乳幼児期にあたる時期を、神性をよく伸ばすための特別な環境が必要な時期とした。またフランスの歴史家アリエスは、社会構造が複雑に高度化したことによって性質の違いが大きくなった大人との比較から、生まれてからの一定期間における学び方や遊び方に特徴がみられる時期を子ども期として扱うようになったと指摘している。同時に、このような子ども期の発見は、家庭教育とは異なる別の教育機関を必要としたことを意味する。フレーベルは、幼稚園を設立し、そこで幼児期のための特別な教育内容や恩物(おんぶつ)といった幼児教育教材を考案し実践している。日本では、幼児教育の実践の第一義的責任は親であり、第二義的責任において、親以外の保護者が行うことになっている。近代日本の教育においては、制度的な幼児教育は「家庭教育の補完」として、家庭教育を補う役割とともに家庭教育における幼児教育のモデルを示すものとしての期待があり、その後個別的である家庭教育と集団的に行われる制度的教育の長短をめぐって、家庭と制度的教育に対する期待と役割に変遷がみられるともいわれている。今日、幼児教育は義務教育ではない。しかし、核家族化や女性の社会進出等に伴い、家庭での教育時間は減少していることから、家庭教育の補完としての制度的な幼児教育の充実が、「待機児童」等の社会的問題や関心を巻き起こすまでに求められている。[宮田まり子・秋田喜代美]

多様な学問的知見によって関心が高まる幼児教育

満1歳という時期は、生理的欲求や情緒の安定が、特定の保護者との愛着関係等を基に図られることを通して自分自身を理解する感覚を獲得し、また二足歩行の開始期など運動機能の高まりによって進む保護者との分離と探索活動の広がりがみられる時期である。以後頻繁に行われる外界の物や人との相互行為は、自身が属する周囲のルールに対する認識や道徳心の芽生え、規範や規範意識の獲得と関係する。またその過程において、自己中心的な自己主張と他者の主張との衝突による葛藤(かっとう)体験や、自己を抑制したり他者に承認されたりするなどの経験から得られる自信は、自己肯定感を高め、さまざまな課題に向かう意欲となる。幼児教育は、このような発達心理学等を基に日々明らかになる幼児期固有の発達に対して行われる教育であるといえる。
 また、神経科学や脳科学をはじめとする生理学における知見から、加齢と脳の情報伝達ネットワークに関係があることが明らかにされ、幼児期におけるある一定期間での教育による刺激とその後の能力の保持や向上に関係があるとして、幼児教育への関心も高まっている。
 その他応用的な学問成果として、幼児教育の効果に関する縦断研究による知見がある。たとえばイギリスでは、質の高い幼児教育を受けた子のほうが11歳時点での自己抑制力や向社会的行動力が高かったという結果が出されている。またアメリカでは、年収が低い世帯に関しては質の高い幼児教育を受けることは就学への準備を高めるとの結果が示された。ジェームズ・ヘックマンは、幼児教育のなかでも子どもの自発的な遊びを尊重し、非認知的能力を育むことをねらいとした幼児教育の有無は、その後の人生の健康や収入、犯罪率の低下に関わるとして、幼児教育の重要性と幼児教育に対する公的資金導入の効果を示唆している。[宮田まり子・秋田喜代美]
『坂元彦太郎著『幼児教育概説』(1968・フレーベル館) ▽岡田正章・平井信義編『保育学大事典1』(1983・第一法規出版) ▽太田素子・浅井幸子編『保育と家庭教育の誕生 1890―1930』(2012・藤原書店) ▽矢野智司著『子どもという思想』(1995・玉川大学出版部)』

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世界大百科事典内の幼児教育の言及

【保育】より

…乳幼児の人間的発達にとっては,適切な食事,排泄,睡眠という基本的活動や遊びなどを含む生活全体が,両親はじめおとなたちの保護と配慮の下におかれる必要があり,この保護・配慮が保育にほかならない。しかし,この語の使用法は実際にはあいまいであり,幼稚園で保育というときには幼児教育とほぼ同義である。一方,保育は福祉に限り教育とは別であるとの考えに立つ用法もある。…

※「幼児教育」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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