斯斯(読み)こうこう

精選版 日本国語大辞典 「斯斯」の意味・読み・例文・類語

こう‐こう かうかう【斯斯】

[1] 〘副〙 (副詞「かくかく」の変化したもの)
① 種々の事態を観念的、包合的にとらえ、話者の立場でそれを指示する。これこれ。しかじか。かくかく。
伊勢物語(10C前)一六「かうかう今はとてまかるを、何事もいささかなることもえせで、遣はすことと書きて、おくに」
② =こう(斯)(一)⑤(ロ)
謡曲烏帽子折(1480頃)「安き間のこと、かうかうおん通り候へ」
[2] 〘感動
① 呼びかけのことば。おいおい。これこれ。→斯(こ)う(二)①。
滑稽本浮世風呂(1809‐13)二「コウコウ、おめへゆふべは大酒屋か」
② 人を打ったり、折檻したりする時の掛け声。この通り。こうだ、こうだ。
歌舞伎幼稚子敵討(1753)三「『そりゃお前の勝手次第。マア夫(それ)迄のお礼は、かうかうかう』と軍兵衛が刀を抜取、背打(むねうち)にする」

かく‐かく【斯斯】

〘副〙 (副詞「かく」の重なったもの) 種々の事態を観念的、包含的にとらえ、それを指示する。特に経験要約報告などする場面で、一つ一つの事態の現実性具体性捨象するのに好んで用いられる。こうこう。しかじか。
蜻蛉(974頃)中「それなんいともどかしう見ゆることなれば、かくかく思ふ、といへば」
[補注]この副詞の指示の包含性は、副詞「かく」の意義からではなく、同じ語を重ねることから生じる。

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