(読み)シ

デジタル大辞泉 「斯」の意味・読み・例文・類語

し【斯】[漢字項目]

人名用漢字] [音]シ(呉)(漢) [訓]これ この かく
この。これ。「斯界斯学斯道
[名のり]つな・のり
難読瓦斯ガス螽斯きりぎりす窒扶斯チフス波斯ペルシア

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「斯」の意味・読み・例文・類語

こうかう【斯】

  1. [ 1 ] 〘 副詞 〙 ( 副詞「かく」の変化した語 )
    1. あり得る事態を観念的、限定的にとらえて、それを指示する。「と…かう…」のように対にしても用いる。ああ。どうこう。これこれ。かく。
      1. [初出の実例]「門に出でて、と見かう見みけれど」(出典:伊勢物語(10C前)二一)
      2. 「入道にかうとも申も入れず」(出典:平家物語(13C前)二)
    2. 事態を、話し手が自分の立場から現実的、限定的にとらえて、それを指示する。このように。かく。
      1. [初出の実例]「かうのみいましつつのたまふことを、思ひ定めて」(出典:竹取物語(9C末‐10C初))
    3. 事態を、是認し、または納得する気持をこめて指示する。この通り。そう。かく。
      1. [初出の実例]「おもしろきことの給ふくそたちかな。ただかうなり。この事は」(出典:宇津保物語(970‐999頃)藤原の君)
      2. 「まへ髪もこうでない、かかがなをしてやりましょと」(出典:浄瑠璃・鑓の権三重帷子(1717)上)
    4. 事態のなりゆきが限界に達したことを認める気持を表わす。もうこれでおしまいだ。これまで。かく。
      1. [初出の実例]「乗りはてて出て『かうか』と言ふに、『まだここに』といらふれば」(出典:能因本枕(10C終)二五六)
    5. 自分の立場で動作を軽く指示する。このように。
      1. (イ) 話し手自身のことにいう。
        1. [初出の実例]「かうまいったらば、つれのない事はあるまいほどに」(出典:虎明本狂言・餠酒(室町末‐近世初))
      2. (ロ) 他人の動作をうながすときにいう。こうこう。
        1. [初出の実例]「さらはおもてへおともめされひ、かうとをらせられひ」(出典:虎明本狂言・萩大名(室町末‐近世初))
  2. [ 2 ] 〘 感動詞 〙
    1. 相手に呼びかけて注意をうながす語。ぞんざいな言い方。ちょいと。おい。
      1. [初出の実例]「コウそこの紙につつんだ物はなんだ」(出典:洒落本・娼妓絹籭(1791)二)
    2. これから言うべき適当な表現を考えまよい、ためらいながら言い出そうとするときにはさむ語。ええと。こうっと。
      1. [初出の実例]「何か云って遣り度い、何かカウ品の好い悪口雑言」(出典:浮雲(1887‐89)〈二葉亭四迷〉九)

こうつかうつ【斯】

  1. 〘 感動詞 〙 考えまようときに発する語。ええと。こうつと。
    1. [初出の実例]「まちなんせやといふて〈略〉こうつ、マア五日と、九日と、十三日と、十七日と、廿三日とが、わたしが勝手ぢゃわいな」(出典:洒落本・月花余情(1746)燕喜篇)

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報 | 凡例

普及版 字通 「斯」の読み・字形・画数・意味


人名用漢字 12画

[字音]
[字訓] さく・これ

[説文解字]
[金文]

[字形] 会意
其(き)+斤(きん)。〔説文〕十四上に「析(さ)くなり」とし、其声とするが、声が合わず、また其は箕(き)の初文であるから、斤を加うべきものではない。おそらく(き)(机)の上にものを置き、これを析く意であろう。〔詩、陳風、墓門〕「門に棘(きょく)り 斧(ふ)を以て之れを斯(さ)く」、また〔列子、黄帝〕「齊國を斯(はな)るること里なるかを知らず」のように用いる。指示代名詞としては、ものを強く特定する意があり、〔論語〕に「斯」「斯の人」「斯の民」のようにいう。「斯須」は連語、「すなわち」のように副詞にも用いる。

[訓義]
1. さく、わる、わける、はなつ。
2. と通じ、つきる。
3. 廝と通じ、いやしい。
4. 斯須、しばらく。
5. 是・・此と通じ、代名詞、この、これ。また副詞、ここに、すなわち。

[古辞書の訓]
名義抄〕斯 コトゴトク・カク・シバラク・カクノゴトク・コレ・カカル・ココニ・マタ・ツクス・シロシ 〔字鏡集〕斯 コノ・コレ・ヲル・カカル・カクノゴトク・コトゴト・シロシ・コトニ・シバラク・マタ・ツノル

[語系]
斯・sieは同声。此tsie、是zjie、tziは声近く、近称の代名詞に用いるが、みな仮借の字。また析syekは析離、斯の本義はこれに近い。

[熟語]
斯役・斯学斯干・斯斯禁・斯須斯食・斯人斯世・斯道・斯薄斯文・斯民・斯養斯濫
[下接語]
飲斯・詠斯・恩斯・瓦斯(ガス)・赫斯・勤斯・斯・波斯ペルシャ)・微斯・斧斯

出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報

今日のキーワード

カイロス

宇宙事業会社スペースワンが開発した小型ロケット。固体燃料の3段式で、宇宙航空研究開発機構(JAXA)が開発を進めるイプシロンSよりもさらに小さい。スペースワンは契約から打ち上げまでの期間で世界最短を...

カイロスの用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android